デジタル大辞泉
「解離性障害」の意味・読み・例文・類語
かいりせい‐しょうがい〔‐シヤウガイ〕【解離性障害】
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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解離性障害
かいりせいしょうがい
本来一つにまとまっている意識や記憶および知覚、あるいは自分は自分であるという自己同一性(アイデンティティ)などの感覚を統合する心的機能が、一時的に分離もしくは破綻(はたん)した状態。過去のある期間の出来事の記憶がまるごとすべて抜け落ちる(解離性健忘)、自己同一性が失われ失踪(しっそう)して知らない場所で生活する(解離性遁走(とんそう))、それは自分に起きていることではないと感じられるなど現実感を失う(離人症)、あるいは体の感覚を一部失ったり体が動かせなくなるなどの症状が深刻となり、日常生活や社会生活にさまざまな支障をきたすようになる。解離性健忘や離人症は、ストレスや心的外傷など、過去の耐えられないほどつらいと感じた体験の記憶を、自分から切り離し思い出さないように封じ込めようとする防衛機制の一つと考えられている。こうした解離現象は、健康人にも病的にではなく一時的に現れる場合がある。
解離性障害でもっとも重い症状が解離性同一性障害(多重人格障害)で、感情や記憶を絶つことによって、自分のなかに別の複数の人格が交互に現れるようになり、ある人格が現れていたときには、その他の人格が現れているときの記憶がないため、周囲の理解が得られず生活に支障をきたすようになる。DID(Dissociative Identity Disorder)と略称される。
世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)では解離性(転換性)障害として、過去の記憶、同一性と直接的感覚の意識、身体運動のコントロールの間の正常な統合が一部ないし完全に失われた状態と定義されているが、アメリカ精神医学会の『精神障害の診断と統計の手引き 第5版(DSM-5)』では、意識、記憶、同一性、環境の知覚というふだんは統合されている機能の混乱というやや狭義の内容となっている。
[編集部 2017年3月21日]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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「解離性障害」の解説
かいりせいしょうがい【解離性障害 Dissociative Disorder】
[どんな病気か]
以前は、ヒステリーの解離型(かいりがた)と呼ばれていました。ヒステリーには、いくつかの種類があります。からだの病気がないのに、からだに機能障害の出る転換型(てんかんがた)と、その個人の意識に亀裂(きれつ)が生じるのが特徴の解離型があります。解離型では、亀裂が生じることにより、その個人が本来もっている「これが自分だ」という感覚に不連続性が生じます。
[症状]
たとえば、非常に大きな精神的ショックの後、ある期間失踪(しっそう)してしまい、その間、自分の名前やそれまでの生活について忘れて、新しい名前を使って生活していることがあります。このようなタイプの失踪をフーグ(解離性遁走(かいりせいとんそう))と呼びます。
失踪はしないまでも、大きなショックの後、自分に対する記憶を失ってしまうことがあります。さまざまな程度のものがありますが、全く記憶を失っている場合を全生活史健忘(ぜんせいかつしけんぼう)といいます。
フーグでは、解離の期間が比較的はっきりしており、日ごろの生活の場から遁走してしまうので、異常に気づきやすいのですが、慢性的に自己意識に解離症状をもちながら、持続的に同じ社会で生活している場合もあります。
たとえば、多重人格(たじゅうじんかく)では、自己の中にいくつかの人格があります。おもな人格が一応正面に出て社会生活はしていますが、ストレスには弱く、不適応を生じやすい状態にあります。また、人格全体が解離してしまうところまでいかなくても、「これが自分」という感覚が薄くなり、自分を外から傍観(ぼうかん)しているような感じがしたりします。自分の周りの出来事も現実感がなく、まるで映画でも見ているように感じられる離人症状(りじんしょうじょう)がみられることもあります。離人症状は、健康な人が極度に疲労したり、マインドコントロールを受けたりしても生じます。また、うつ病や薬物依存など、さまざまな精神疾患と関連しても生じます。
他の精神疾患との鑑別を行ない、治療を始めます。
出典 小学館家庭医学館について 情報
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