触太鼓(読み)フレダイコ

デジタル大辞泉 「触太鼓」の意味・読み・例文・類語

ふれ‐だいこ【触(れ)太鼓】

物事を人々に広く知らせるために打つ太鼓。特に相撲で、初日の前日に、呼び出しが太鼓をたたきながら興行が始まることを町中に触れ回ること。また、その太鼓。

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精選版 日本国語大辞典 「触太鼓」の意味・読み・例文・類語

ふれ‐だいこ【触太鼓】

〘名〙 あることを広く知らせるために打つ太鼓。芝居・相撲などで行なわれたが、特に、相撲で、初日の前日に取組などを太鼓をたたいて市内に触れ回ること。また、その太鼓。
※大江俊光記‐元祿一二年(1699)六月一七日(古事類苑・武技一九)「在所の相撲触太鼓、昨夜半過御免之由、助太夫被申、今日相撲有」

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改訂新版 世界大百科事典 「触太鼓」の意味・わかりやすい解説

触太鼓 (ふれだいこ)

相撲興行における行事の一つ。本場所が始まる初日の前日,行司が主宰する土俵祭が行われ,終了後〈呼出し〉が天びんにつるした太鼓をたたきながら土俵を3周した後,明日から相撲が始まることを告げるために市中に繰り出す。江戸時代には相撲興行を知らせる情報機関がないため,触太鼓の役目は重要で,また降雨のため中止になった後,再開を告げるときにも行われた。市中に出た呼出しは,各所を回り,明日から相撲興行があることと,初日の好取組の力士名を独特の節回しで触れ歩く。相撲場から出た本太鼓のほかに別動隊がいて,5組に分かれて市内を一巡する。現在の触太鼓は,東京では,下町は両国方面から日本橋,浅草,柳橋,吉原方面,厩橋から銀座方面,それに赤坂,山手方面とめぐるが,朝の10時から夕方の6時ごろまで各組が回って帰ってくる。近年は回る個所が減少する傾向にある。昔は,この触太鼓5個のうちの1個を櫓(やぐら)に上げたが,現在は櫓専用のものを使用している(櫓太鼓)。
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世界大百科事典(旧版)内の触太鼓の言及

【太鼓】より

…膜状の物質,主として動物の革を張りつめて弾力をもたせ,これを打って音を出す楽器の総称。原始時代から諸民族の中に深く浸透していた楽器の一種であり,最古のものは前約2500年,シュメールの浮彫に見られる。現在に至るまで多くの地域で呪術信仰と密接に結びついており,神聖視されていて,材料の選択や製作過程に厳格な掟をもつ地域もある。アフリカの民俗の中では,月・実り・母などの女性的象徴,太陽・再生などの男性的象徴となっているほか,一個の人格と同様に扱われて食物や犠(いけにえ)がささげられたり,悪霊払いにも広く用いられている。…

【土俵】より

…次に関係者一同に神酒が回されて土俵祭が終わる。土俵祭が終わると控えていた呼出し連中が,西の花道から〈触(ふれ)太鼓〉をたたきながら2組入場し,土俵下を左回りに3周したうえ,市街に繰り出して,明日から相撲が始まることを触れ歩く。町へ出るのは2柄(がら)の太鼓であるが,途中に待機している5柄の太鼓は,それぞれの受持ちの区域に分かれて,夕暮れまで市中を触れ歩く。…

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