言語論的転回(読み)げんごろんてきてんかい(その他表記)linguistic turn

知恵蔵 「言語論的転回」の解説

言語論的転回

現代哲学の基本傾向を指す言葉。近代哲学や現象学が個々人の「意識主観」を土台とし、そこでの観念や経験を分析することによって、認識や善悪などの本質を解明しようとしていたのに対し、現代哲学の多くの論者は、人々の間に共有されている「言語」を土台に、それらの問題を捉え直そうとしている。意識から言語へのこうした転換が言語論的転回と呼ばれ、ローティ編者となったアンソロジー(『言語論的転回』〈1967年〉)によって広く知られるようになった。言語論的転回の代表者の1人がウィトゲンシュタインであり、彼は、他者からは知り得ない内面の感覚がまずあって、それを言語が写し取る、という見方を否定する。内面の感覚というものも、共有されたルールをもつ言語によってはじめて表現されるものだからである。しかし意識哲学に対する言語哲学勝利が確定した、と単純にはいえない。言語の働きを思考するためには、やはり言語についての意識の経験を分析する以外にない、というふうに、現象学のような意識哲学は反論するからである。いまもなお、言語哲学と意識哲学の間では、論争対話が行われている。

(西研 哲学者 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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