許・赦・聴・緩(読み)ゆるす

精選版 日本国語大辞典 「許・赦・聴・緩」の意味・読み・例文・類語

ゆる・す【許・赦・聴・緩】

〘他サ五(四)〙 (「ゆる(緩)」「ゆるい(緩)」と同語源)
① 引き張ったものをゆるめる。
万葉(8C後)一一・二五〇五「梓弓引きて許(ゆるさ)ずあらませばかかる恋には逢はざらましを」
源氏(1001‐14頃)若菜上「猫の綱ゆるしつれば」
② 捕えたものを逃がす。解放する。また、身からはなす。
※万葉(8C後)一七・四〇一一「夕猟(ゆふかり)千鳥踏み立て 追ふごとに 由流須(ユルス)ことなく」
御伽草子・唐糸草子(室町末)「かの脇指を、肌身をゆるさずさしもって」
③ 罪、とが、あやまち、欠点などをとがめないですませる。また、罰したものを赦免する。釈放する。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)八「其の過失造るを縦(ユルセ)らむときには」
※枕(10C終)九「かしこまりゆるされて、もとのやうになりにき」
④ ある行為をさしつかえないとして許可する。禁を解く。
※万葉(8C後)八・一六五七「官(つかさ)にも縦(ゆるし)たまへり今夜のみ飲まむ酒かも散りこすなゆめ」
※米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一「往来回廊には商賈を縦(ユル)し、果物器翫彩影新聞紙等を肆ねて店をはる」
⑤ 気持をゆるめる。また、相手を信頼し、うちとける。→心(こころ)を許す
書紀(720)武烈即位前・歌謡「臣(おみ)の子の 八重の唐垣 瑜屡世(ユルセ)とや御子(みこ)
※宇治拾遺(1221頃)三「なさけは交しながら、心をばゆるさず」
⑥ 願いを聞き入れる。聞き届ける。
※書紀(720)推古三一年七月(岩崎本訓)「将軍等、共に議りて表を上る。天皇聴(ユルシ)たまふ」
※竹取(9C末‐10C初)「ことしばかりのいとまを申つれど、さらにゆるされぬによりてなむ、かく嘆き侍る」
⑦ 女が男に身をまかせる。→肌(はだ)を許す
※話の屑籠〈菊池寛〉昭和六年(1931)九月「現在の良人と結婚する一月前に恩師にただ一度許したところが、妊娠した」
⑧ 義務や負担を免ずる。
※新古今(1205)賀・七〇七・詞書「みつぎ物ゆるされて、くに富めるを御覧じて」
⑨ すぐれていると認める。
※書紀(720)推古二九年二月(岩崎本訓)「固に天に縦(ユルサ)れたり」
青春(1905‐06)〈小栗風葉〉春「女生一般の目から、一人才色双美を以て、成女大学の花と許されて居るくらゐであるが」
自分やまわりの状態などが、ある物事を行なうことを可能にする。
福翁自伝(1899)〈福沢諭吉緒方塾風「出来ることなら外の処も写したいと云たが時日が許(ユル)さない」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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