証券先物取引(読み)しょうけんさきものとりひき(英語表記)securities futures transaction (contract)

日本大百科全書(ニッポニカ) 「証券先物取引」の意味・わかりやすい解説

証券先物取引
しょうけんさきものとりひき
securities futures transaction (contract)

株式や国債のような証券化された金融資産の先物取引のこと。先物取引とは、将来の特定の日に、定められた数量と価格で特定の商品の受渡しを約束する取引である。証券先物取引の機能は、敏速かつ確実に大量の証券を取引させることによって公正な先行価格指標を形成すること、価格の平準化に資すること、将来の証券価格の変動によるリスクをヘッジ(危険回避)する手段を提供することにある。最後の点を簡単な例で示す。現物株式(原資産)をもつ人が先行き相場の下落を予想したときは、先物市場で売り契約を結んでおく。この契約はかならず実行しなければならないから、約束の日までに予想通りになれば、買い戻すことによって差益が出て値下がり分をカバーできる。予想が外れて相場が上がった場合、先物取引では損失になるが現物は値上がりしているので、損失を相殺することができる。

 先物取引は信用取引と同様に、委託証拠金を入れるだけで行うことができる。委託証拠金は、売買金額の9%、最低600万円となっているので、比較的小さな資金で大きな取引が可能になる。証券先物取引は実体のない商品の取引であるから、売ったものは期限までにかならず買い戻し、買ったものはかならず売らねばならない。取引清算のための売買期限を限月(げんげつ)といい、3、6、9、12月の第2金曜日の前日と定められている。つまり先物取引は限月取引であり、つねに五つの限月取引が並行して展開され、最長期間は1年3か月の5限月取引となる。期限内に取引した売買結果は、売買代金の価格差を清算する差金決済として処理される。

 証券先物は、株式先物と債券先物に大別され、証券取引所の先物市場で取引が行われる。株式先物の代表的なものは、TOPIX(トピックス)先物、日経225先物、日経225mini(ミニ)、日経300先物、RNプライム指数先物である。債券先物には、10年もの国債先物等がある。

[森本三男]

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