改訂新版 世界大百科事典 「資源配分」の意味・わかりやすい解説
資源配分 (しげんはいぶん)
allocation of resources
資源配分とは一般に,さまざまな希少資源がなにをどのようにつくるために配分されるかということを意味するが,経済学の概念として基本的な役割を果たすものである。経済学者のなかには,たとえばロビンズLionel Charles Robbins(1898-1984)のように,科学としての経済学の主要な課題は,資源配分の問題を解くことであるという主張をする人もいるほどである。
市場経済制度のもとでは,資源配分の問題は市場を通じて解かれる。すなわち,希少資源はすべていずれかの経済主体に属し,各経済主体はそれぞれみずから所有する希少資源を市場に供給するなり,みずから生産あるいは消費のために用いて,そのさい得られる便益--利潤あるいは効用--が最大となるような選択を行う。つまり資源配分は,希少資源を所有する経済主体の私的な利潤追求の結果として決まってくるわけであるが,完全競争的な市場を前提とすれば,このようにして得られた資源配分はパレート最適となるというのが,新古典派経済理論における最も重要な命題の一つとなっている。この命題は資本主義的な市場経済制度のもとでは,各経済主体がそれぞれ私的な利益のみを追求しながら,結果として社会的に望ましいような資源配分が実現することを示すものとして,市場制度の利点を強調しようとするのである。
しかし,現実には,希少資源の用途を一つの形から他の形に変えるということは,たとえ可能であっても必ずしも容易でないことが一般的であり,また生産の諸条件についてもこの新古典派命題の要請する条件は満たされていない場合が多い。さらに,希少資源のうち,私有されないで,社会的に管理されて社会的共通資本としての機能を果たしているものも少なくない。このような状況のもとでは,完全競争市場均衡における資源配分のパレート最適性という性質は一般には満たされない。さらにこのパレート最適性は静学的な状況にのみ適用されるものであって,希少資源の異時点間の配分という動学的な状況については,市場制度のもとにおける資源配分の社会的最適性という結論は得られない。
資源配分の問題を社会的な観点から解決しようというのが計画経済である。計画経済では,中央集権的な計画当局によって,国民経済全体についてさまざまな希少資源をどのように配分して,なにをどれだけつくるかという計画が作成されて,すべての経済主体がその計画にしたがって行動する。しかしこのような中央集権的な経済計画については,具体的にどのようにして整合的なプランを作成するのかという点から,実行不可能に近いか,あるいは可能であってもその誤差はきわめて大きいものがあるのが一般的であろう。そこで,これに対して分権的な経済計画を通じて資源配分の問題を解決しようとするのが最近の趨勢(すうせい)である。
執筆者:宇沢 弘文
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報