張子製の人形の底に土のおもりをつけた玩具。倒してもおもりのせいで起き上がるようにつくってある。中国に唐代からある木製人形の酒胡子(しゆこし)が原型といわれる。この人形は尻がとがっており,盤中でこれを転がすとしばらく舞った後に倒れる。その静止した方向の座にある者が盃を受けるという酒席の遊びに用いられた。明代にこれが張子製となり酒客の間でもて遊ばれた。転がしても必ず起き上がる姿から不老不死の意味で〈不倒翁〉と名づけられた。明末に室町時代の日本に移入され,最初は不倒翁の名で呼ばれたが,やがて童形の小法師につくり変えられ,子どもの玩具となり〈おきあがりこぼし〉〈おきゃがりこぼし〉ともいった。小法師は子どもの意で,当時の小舞の一節に〈いたいけしたる者あり(略)起上り小法師,ふりつづみ,手まりやおどるまり小弓〉とあり,室町時代の代表的な玩具の一つであったことが知られる。現在も幼児用玩具として見られる。なお,江戸時代には〈七転び八起き〉の縁起と結びついて一般に喜ばれ,玩具以外に縁起物の置物にされた。なかでも,養蚕の上蔟(じようぞく)にちなむ縁起物,商売繁盛,招福のマスコットとして張子だるまが生まれ,起上りの代表的なものとなった。
執筆者:斎藤 良輔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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