告訴・告発された人物などについて、検察官が不起訴とする理由の一つ。起訴か不起訴かについて、検察官の裁量が認められる「起訴便宜主義」に基づく。証拠によって罪を犯したことが明白で、検察官が有罪を立証できると判断しても、境遇や犯罪の軽重、情状などを総合的に考慮し、起訴を見送ることができると刑事訴訟法に定められている。不起訴理由には他に「嫌疑不十分」「嫌疑なし」「時効完成」「心神喪失」などがある。
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被疑事件について、検察官が、犯罪は成立し訴訟条件も完備していると認めたが、公益上訴追を必要としないとして、公訴を提起しない処分(不起訴処分)をすること。現行法は、犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる(刑事訴訟法248条)として、犯罪が成立する場合はかならず起訴すべきであるとする起訴法定主義によらず、検察官の裁量による起訴猶予を許す起訴便宜主義を採用している。『犯罪白書』(2009)によれば、2008年(平成20)における起訴猶予率は、全事件に対して60.2%、一般刑法犯(自動車運転過失致死傷等を除く)で42.1%、自動車運転過失致死傷等で90.0%、道路交通法違反で29.6%、その他の特別法犯で39.8%を占めている。
なお、起訴便宜主義の短所を補う制度として、裁判上の準起訴手続(付審判手続)、検察審査会による不起訴処分の審査、告訴告発者に対する不起訴理由の通知の制度がある。
[内田一郎・田口守一]
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…日本で起訴便宜主義が法規の明文で定められたのは1922年の刑事訴訟法からであるが,実務上は明治時代から実質的に起訴便宜主義によっていたとされる。犯罪の嫌疑があるにもかかわらず起訴便宜主義の観点から起訴を差し控えることを〈起訴猶予〉という。起訴猶予は,犯罪の司法前処理の性格を持つ。…
※「起訴猶予」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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