日本大百科全書(ニッポニカ) 「躙口」の意味・わかりやすい解説
躙口
にじりぐち
草庵(そうあん)風茶室に使われる入口の形式で、「潜(くぐ)り」ともよんだ。高さも幅も二尺(約60センチメートル)余りの小さな口から躙り入るので、「躙り上り」とも称された。『松屋日記』は、千利休(せんのりきゅう)が「大坂ひらかた(枚方)ノ舟付ニくぐりにて出(でる)を侘(わび)て面白(おもしろし)」として茶室に試みたと伝えている。待庵(たいあん)の躙口が高さ二尺六寸、幅二尺三寸六分で通例よりかなり大きいのは、早い時期の試みであったことを示す。躙口には挟み敷居と挟み鴨居(かもい)を取り付け、板戸をたてる。板戸は雨戸を切り縮めた形式で、わびた心持ちを表現している。
[中村昌生]
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