MDLと略称される。休戦または停戦時,対峙する両軍の態勢を固定し,あるいは戦線から兵力を引き離すなどのために設ける基準線。通常休戦などが成立した時点の戦線をもって軍事境界線とする。休戦や停戦に伴って敵対行為の発生を防止するため,軍事境界線ぞいの兵力を引き離し,緩衝地帯(バッファーゾーンbuffer zone)を設ける場合もある。この際,非武装地帯を軍事境界線の両側に設け,非武装地帯内の武装を禁止し,この履行を国際的な監視委員会で監視する。またあるいは双方の兵力を撤退させたあとに国連軍など第三者が駐留して監視することもある。朝鮮戦争の場合,休戦時,軍事境界線の設定で両軍の主張が対立したが,両軍の現実の接触線を軍事境界線とすることで休戦協定が成立している。さらに両軍は軍事境界線からおのおの2km後方に撤退して非武装地帯を設け今日に至っている。中東戦争では,停戦ラインを軍事境界線とし,その後兵力引離し協定が調印されるたびに時の情勢に応じて軍事境界線は引きなおされ,新軍事境界線が設けられるとそれを中心にエジプト,イスラエル両軍の間に4~10kmの緩衝地帯を設け,国連軍が駐留し停戦を監視した。
執筆者:茅原 郁生
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北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と韓国を分ける、北緯38度線付近の境界線。DMZ(Demilitarized Zone)、軍事分界線ともいう。1953年7月27日に締結された朝鮮戦争休戦協定で定められた事実上の国境。南北それぞれに幅2キロメートルの非武装中立地帯が設置されている。同地帯には多くの地雷が埋められ、双方の警備はきわめて厳格である。韓国側にはコンクリート障壁が設けられている一方、北朝鮮はスパイを韓国に侵入させるため複数のトンネルを掘削したことが判明している。軍事境界線上には、南北朝鮮間の会談の場となる板門店(パンムンジョム)が位置している。
休戦協定では海上の境界線が定められておらず、黄海(こうかい)上では韓国が李承晩(りしょうばん)政権期に北方限界線(NLL:Northern Limit Line)を設定した。北朝鮮は「米軍側が休戦協定と国際法を無視して一方的にわが方の領海内に引いた不法な線だ」と主張し、軍事境界線を延長する形でNLLより南側に海上軍事境界線を設定している。
[礒﨑敦仁 2020年10月16日]
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