軍部(読み)グンブ

デジタル大辞泉 「軍部」の意味・読み・例文・類語

ぐん‐ぶ【軍部】

陸軍海軍空軍などの総称。また、軍の当局

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精選版 日本国語大辞典 「軍部」の意味・読み・例文・類語

ぐん‐ぶ【軍部】

  1. 〘 名詞 〙 軍(陸・海・空軍)に所属する諸機関の総称。軍の当局。また、政府・民間に対する軍人勢力。
    1. [初出の実例]「大学からも軍部に接触して行く学者が続出した」(出典:イタリアの歌(1936)〈川端康成〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「軍部」の意味・わかりやすい解説

軍部 (ぐんぶ)

陸,海,空軍諸機関の総称。またその当局を,政府や民間と対比して指すとき使われる。とくに軍の上層部が政府にたいし相対的独自性をもつ政治勢力となった場合に,これを軍部と呼ぶ場合が多い。ナチス支配下においてもその独自性を維持し続けたドイツ国防軍当局を,ドイツ軍部と通称するのがその例である。日本においても明治国家が軍国主義的政策をすすめ,軍備強化を第一の方針としたため,軍部の相対的な独自性は初めから強かった。とくにそれを制度的に保障し,政治からの軍部の独立的地位を守ったものは,統帥権の独立と,軍部大臣武官制であった。そして政党勢力が進出してくる明治末期から,これに対抗して軍部の独自な政治勢力化がすすんだ。第1次大戦後の軍縮の気運と政党政治の確立は,やや軍部の政治的地位を後退させたかにみえたが,大恐慌による社会不安の激化と,中国革命の進展に対抗して,軍部はその独立を保障する制度を利用し強力な巻返しをはかった。中国侵略の開始や,三月事件にはじまり二・二六事件に至る一連のクーデタ計画は,軍部の政治的発言権を拡大した。日中全面戦争の開始は,軍部の政治的制覇をもたらし,太平洋戦争に至ってその独裁的な支配を確立するまでになった。敗戦によって軍部は解体されたが,再軍備が進行するとともに,再びその復活の可能性もある。

陸海軍大臣を武官に限定する制度で,近代日本において軍部の政治的独立を保障し,軍閥支配の武器となった。1871年(明治4)兵部省官制で兵部卿の補任資格を武官に限ったのにはじまり,制度上は中断したり復活したりしていたが,隈板内閣の後をうけた第2次山県有朋内閣は,政党勢力の軍部への介入を防ぐために,1900年5月陸海軍省官制を同時に改正して,大臣の補任資格を現役大将中将に限定した。武官制だけでなく,さらに現役であることを要件とする現役武官制を確立したのである。この軍部大臣現役武官制は,1912年第2次西園寺公望内閣のときに早速効果を発揮した。2個師団増設を要求した上原勇作陸相は単独辞職して内閣を倒し,大正政変の原因をつくったのである。第1次護憲運動は軍閥を攻撃し,武官制の廃止を要求した。このため第1次山本権兵衛内閣は,1913年6月陸海軍省官制を改正し,現役の制限を除いたが,武官制そのものは存続させた。36年5月,二・二六事件の圧力背景に官制は再び改正されて,現役武官制が復活した。この効果はたちまち発揮され,翌37年1月宇垣一成の組閣に反対する陸軍は,陸相を出さず内閣の成立を阻んだ。さらに40年7月畑俊六陸相は単独辞職によって米内光政内閣を倒壊に追い込んだ。軍部がその希望する政策を実現するために,内閣の生殺与奪の権を握る武器として,この軍部大臣現役武官制が活用され,軍部の政治的地位を保障した。
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百科事典マイペディア 「軍部」の意味・わかりやすい解説

軍部【ぐんぶ】

陸・海・空軍諸機関の総称。特に政府に対し相対的独自性を持った軍上層部の政治勢力をいう。日本では,明治国家が軍国主義的政策を進め,統帥(とうすい)権の独立と軍部大臣現役武官制(1900年確立)をとったため,当初から独立性が強かったが,日露戦争以後,その存在と勢力が明確化した。第1次世界大戦後の軍縮の気運と政党政治の確立で1913年軍部大臣現役武官制を改正するなど,一時勢力を後退させたが,大恐慌による社会不安などにより巻き返し,二・二六事件後は軍部大臣現役武官制を復活,一層発言権を拡大。太平洋戦争に至って独裁的支配を確立。敗戦によって解体された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「軍部」の意味・わかりやすい解説

軍部
ぐんぶ

国家の武装組織である軍隊 (特にその幹部集団) が,その武力を背景に政治諸勢力のなかの一単位として政治行動を行う場合,これを特に軍部という。軍部が権力を独占した場合が,軍部独裁である。

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