込める(読み)コメル

デジタル大辞泉 「込める」の意味・読み・例文・類語

こ・める【込める/籠める】

[動マ下一][文]こ・む[マ下二]
ある物の中に、しっかり収め入れる。詰める。「弾を―・める」
その中に十分に含める。特に、ある感情気持ちを注ぎ入れる。「力を―・める」「願いを―・める」「真心を―・めた贈り物」
ある範囲に別の物を含める。「税金を―・めた価額
霧・煙などが辺り一面に広がる。たちこめる。「霧が―・める」
閉じこめる。こもらせる。
「女をばまかでさせて、蔵に―・めて」〈伊勢・六五〉
包み隠して表に出さないようにする。
「世の人聞きに、しばしこの事出ださじと、せちに―・め給へど」〈行幸
力でおさえつける。また、やりこめる。
「あんまり―・めてくれるな」〈伎・四谷怪談

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精選版 日本国語大辞典 「込める」の意味・読み・例文・類語

こ・める【込・籠】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 マ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]こ・む 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙
    1. 物の中へ入れる。
      1. (イ) ある場所に入れて出さないようにする。とじこめる。
        1. [初出の実例]「この女のいとこの御息所(みやすどころ)、女をばまかでさせて、蔵にこめてしをり給うければ」(出典:伊勢物語(10C前)六五)
        2. 「雀の子をいぬきがにがしつる。ふせごのうちにこめたりつるものを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
      2. (ロ) 外から囲むようにおおい入れる。
        1. [初出の実例]「花の色は霞にこめて見せずとも香をだにぬすめ春の山風〈遍昭〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春下・九一)
      3. (ハ) 入れ物などにつめる。また、おさめ入れる。
        1. [初出の実例]「濃き綾のいとつややかなる、いたくは萎えぬを、頭こめて、引き着てぞ寝ためる」(出典:能因本枕(10C終)四三)
        2. 「テッポウニ タマヲ komeru(コメル)」(出典:和英語林集成(初版)(1867))
      4. (ニ) 特定の場所にずっと居させる。
        1. [初出の実例]「霊仏霊社にたっとき僧をこめ、種々の神宝をささげて祈り申されけれども」(出典:平家物語(13C前)一一)
        2. 「シロニ ツワモノヲ komeru(コメル)」(出典:和英語林集成(初版)(1867))
    2. 心の思いなどを表にあらわさないようにする。包み隠す。
      1. [初出の実例]「美夜自呂(みやじろ)の砂丘辺(すかへ)に立てる貌(かほ)が花な咲きいでそね許米(コメ)てしのはむ」(出典:万葉集(8C後)一四・三五七五)
      2. 「ちぢに思ひくだくれど、のたまふべき人しなければ、心にこめてありへ給ふ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
    3. 表情、言語、行動などの中に含ませる。持たせる。
      1. [初出の実例]「調子をば機にこめて、声を出すがゆゑに」(出典:花鏡(1424)一調二機三声)
      2. 「悪意が罩(コ)められ過ぎてゐることを直覚した」(出典:或る女(1919)〈有島武郎〉前)
    4. ひとつのものにまとめる。一括する。
      1. [初出の実例]「数おほかりしを、中比、式三番にこめしとぞ」(出典:わらんべ草(1660)一)
    5. 気持などを集中する。
      1. [初出の実例]「イルイノ テマヲ cometa(コメタ) コトドモヲ ミテワ」(出典:ロドリゲス日本大文典(1604‐08))
      2. 「一心を込めて為せば、成らざる者無し」(出典:幼学読本(1887)〈西邨貞〉三)
    6. 力でおさえつけて従わせる。いじめる。やりこめる。
      1. [初出の実例]「殿の、弟にこめられさせ給ひて、藤氏の長者なども退(の)かせ給ひたるなどを」(出典:今鏡(1170)三)
      2. 「あんな野郎にこめられては男がたたねえ」(出典:滑稽本・人間万事虚誕計‐後(1833))
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 マ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]こ・む 〘 自動詞 マ行下二段活用 〙 煙、霧、霞などがあたりにいっぱいになる。立ちこめる。
    1. [初出の実例]「かすみこめたるながめのたどたどしさ」(出典:十六夜日記(1279‐82頃))
    2. 「朝霧罩めた飛行場から」(出典:在りし日の歌(1938)〈中原中也〉青い瞳・冬の朝)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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