迷走神経(読み)めいそうしんけい

精選版 日本国語大辞典 「迷走神経」の意味・読み・例文・類語

めいそう‐しんけい【迷走神経】

〘名〙 第一〇番目の脳神経延髄から出て内臓分布し、声帯心臓、胃、腸、消化腺運動分泌を支配する。交感神経拮抗する作用を有し、副交感神経の代表的な神経。〔医語類聚(1872)〕

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デジタル大辞泉 「迷走神経」の意味・読み・例文・類語

めいそう‐しんけい【迷走神経】

脳の延髄から出ている末梢神経の一。複雑な走行を示し、頸部けいぶ胸部に分布し、さらに腹部に達して多くの内臓に分布。大部分副交感神経からなり、平滑筋の運動や腺の分泌機能を調節する。第十脳神経。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「迷走神経」の意味・わかりやすい解説

迷走神経
めいそうしんけい

脊椎(せきつい)動物の第10脳神経で、脳を出たのち、その名のようにきわめて複雑な走行と分布を示す。頭蓋(とうがい)を出て、頸(けい)部を下って胸腔(きょうこう)に入り、さらに腹腔に達して、広く胸腹部(骨盤を除く)の内臓に分布し、その知覚、運動、分泌を支配する。分布範囲は脳神経のなかでいちばん広く、頸胸部では咽頭(いんとう)、喉頭(こうとう)、心臓、肺、食道など、腹部では胃から大腸上半部までの腸管、肝臓膵臓(すいぞう)、脾臓(ひぞう)、腎臓(じんぞう)などに分布する。主として副交感神経繊維からなり、交感神経と拮抗(きっこう)しながら、内臓の平滑筋の運動と腺(せん)の分布を調節する。

[新井康允]

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百科事典マイペディア 「迷走神経」の意味・わかりやすい解説

迷走神経【めいそうしんけい】

脳神経の第10対で第10脳神経ともいう。知覚・運動・分泌をつかさどり,生理学的には副交感性である。脳神経中最大の分布領域をもち,交感神経とも混じ,多数に枝分れして複雑な経路を示すのでこの名がある。脳の延髄から起こり,その本幹は頸(けい)静脈孔を通じて頭蓋腔外に出て首の両側を下り,胸腔に入って食道の両側に沿って走り,横隔膜を貫いて腹腔に入る。途中多くの枝を咽頭(いんとう),喉頭(こうとう),気管,気管支,肺,心臓,食道に出し,腹腔内でも多くの枝に分かれて胃,腸,肝臓,膵臓(すいぞう),脾臓,腎臓などに広く分布する。
→関連項目胃切除後症候群

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改訂新版 世界大百科事典 「迷走神経」の意味・わかりやすい解説

迷走神経 (めいそうしんけい)
nervus vagus

第10脳神経で,延髄に出入し,咽頭,喉頭,食道上部の運動神経や腺の分泌神経のほか,胸腔や腹腔の内臓から感覚情報を伝達する神経と副交感神経を含む。脳神経でありながら,はるばる腹腔にまで下行して分布するところから,この名がある。
脳神経
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「迷走神経」の意味・わかりやすい解説

迷走神経
めいそうしんけい
vagus nerve

第 10脳神経。延髄から出て頭部や頸部,胸部,腹部 (骨盤を除く) のすべての内臓に分布して,感覚,運動,分泌を支配している。その大部分の線維は副交感性である。脳神経でありながら腹部にまで達しており,その末梢分布が複雑でわかりにくかったので,迷走という名がつけられた。

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栄養・生化学辞典 「迷走神経」の解説

迷走神経

 脳から直接出ている末梢神経,すなわち脳神経の一つで,運動と知覚の混合神経.頭部,頚部,胸部,腹部と広く分布している.食欲調節その他,消化液の分泌調節など食物とからだの関係にも深くかかわっている.

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世界大百科事典(旧版)内の迷走神経の言及

【延髄】より

…神経核には,迷走・舌咽・副・舌下神経の四つの脳神経の核がある(図)。迷走神経は大きく分けて,頸部,胸部,腹部の内臓に分布する。頸部では,喉頭の筋を動かして行う発声運動と咽頭の筋を収縮させて行う嚥下(えんげ)運動(食物を飲み込む働き)との二つの働きをする。…

【脳神経】より

… 第10脳神経には,咽頭,喉頭,食道上部などにある横紋筋の運動神経,咽頭や喉頭の腺の分泌神経,咽頭や喉頭の感覚神経などのほか,外耳道の一部や耳介付着部後面付近からの感覚を伝達する神経が含まれるが,最も大きな要素は,心臓,胸腔内臓および腹腔内臓(直腸,S状結腸,下行結腸,膀胱,子宮などの骨盤内臓を除く)からの感覚情報を伝達する神経と,副交感神経,すなわちこれらの内臓の平滑筋の運動神経と腺の分泌神経を含んでいる。第10脳神経は延髄に出入するのであるが,はるばる腹腔にまで下行して分布するから〈迷走神経nervus vagus〉ともよばれる。 第11脳神経は副神経nervus accessoriusとよばれ,僧帽筋と胸鎖乳突筋の運動神経である。…

※「迷走神経」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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