改訂新版 世界大百科事典 「追而書」の意味・わかりやすい解説
追而書 (おってがき)
古文書学上の用語。書札様文書において,本文を書き終わったあと,改めて書き足した文章のこと。ふつう〈追而申〉ではじまるので追而書という。はやくは本文のあと,すなわち礼紙に書かれたものもあるが,南北朝時代以降の実例についてみると,〈追而申〉〈追申〉〈逐申〉などではじまる追記は,本紙,礼紙とは別の一紙に書かれており,院宣,綸旨(りんじ),御教書(みぎようしよ)などの公文書に多く,文章も比較的簡潔である。これに対して私文書たる書状にあっては,本紙の余白に書き,〈尚々〉あるいは〈返々〉ではじまるのが普通である。この場合には,本紙の右端(袖)の余白に,天地の真ん中ぐらいのところから書きはじめる。それで終わらないときには,その上の余白に左から右に斜めに書き,さらに必要ならば行間に書く。行間に書くときには,本文より小さく,1~2字上から書く。書止めがないものが多いが,書状では〈かしく〉〈以上〉〈已上〉などが用いられる。したがって現在の古文書学では,一部の中世の書札礼に従って,追而書を礼紙書あるいは礼紙端書といい,また追而書と尚々書(なおなおがき)を同一のものとして説明しているが,多くの実例についてより厳密な検討が必要である。戦国時代末から近世にかけての文書に,本文の前に〈以上〉と書いたものをみかけるが,これは本文の袖に尚々書がないという意味である。
執筆者:上島 有
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報