送風機(読み)ソウフウキ

デジタル大辞泉 「送風機」の意味・読み・例文・類語

そうふう‐き【送風機】

圧力を与えて空気やガスを送り出す装置。建物や船舶・トンネルの換気、溶鉱炉ボイラーの通風、セメント・穀物の空気輸送などに使用。ブロワー

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精選版 日本国語大辞典 「送風機」の意味・読み・例文・類語

そうふう‐き【送風機】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 空気や他の気体に圧力を与えて送り出す装置。普通、比較的圧力の低いもの(一・五気圧以下)を呼び、鉱山の坑内や溶鉱炉に用いる。〔工学字彙(1886)〕
  3. 扇風機。
    1. [初出の実例]「控鈕(ボタン)を押すと、頭の上にある送風器(ソウフウキ)が二つ程同時に廻転し出した」(出典:流行(1911)〈森鴎外〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「送風機」の意味・わかりやすい解説

送風機 (そうふうき)

動力の供給を受け,羽根車,ローターなどの作動部分が,外部から吸い込んだ気体に仕事をしてその力学的エネルギー(圧力,速度)を増加させることによって,気体の輸送,昇圧などを行う機械。送風機は冶金技術などの進歩とともにしだいに多方面に利用されるようになってきた。例えば,18世紀中ごろに水車を動力源とした往復式送風機を溶鉱炉内への送風に用いたり,19世紀中期には鉱山通風用の送風機などが現れている。しかし本格的な送風機が開発されて各種産業に用いられるようになったのは20世紀に入ってからで,とくに1950年代以降産業用送風機の需要が著しく増え,大型化,高性能化するとともに用途が多様化してきた。

 送風機と圧縮機は作動原理,構造および作用などに大差はないが,両者は機械内での圧力上昇の程度で区別され,送風機はさらに上昇圧力の高低によりファンとブロワーに分けられる。すなわち,一般に101.3kPa(1気圧),20℃の標準空気を吸い込んだ場合,上昇圧力がゲージ圧力で9.807kPa(10kPa)以下のものをファンfan,9.807~98.07kPa(10~100kPa)をブロワーblower,98.07kPa(0.1MPa)以上を圧縮機と呼んでいる(従来の日本機械学会での区分をSI単位に換算したものだが,通常端数を切り上げ,かっこ内の区分を用いる)。

 送風機の能力は,圧力上昇の程度と取り扱う気体の量(流量)で表される。前者は送風機出口における気体の圧力(吐出圧力),あるいは出口と入口における気体の圧力の差(送風機内での圧力上昇で,送風圧ともいう)で示したり,または送風機入口と出口における圧力の比(圧力比)が用いられる。圧力は従来の単位では,低圧の場合はmmAq(水柱ミリメートル),高圧ではkgf/cm2などを用いたが,最近では圧力の高低にかかわらずPaで表示するのが一般的になっている。なお,大気圧を基準にして示す場合はゲージ圧力と明示する。送風機の流量は単位時間当りに流れる気体の量で示される。これには質量流量(たとえばkg/s),体積流量(たとえばm3/s)などがあるが,後者の場合は,圧力,温度に影響されるので,とくに吸込状態に対するものを用いることが多い。

送風機の形式は,ターボ形と容積形に大別される。ターボ形は,エネルギー交換が行われる機械の作動部分が,羽根車と呼ばれる多数の羽根(または翼)を配列した回転体からなり,その部分を通過して仕事をされた気体の圧力と速度が増加する形式のものをいう。容積形は気体をシリンダーなどの一定体積内に密封し,その体積をローターの回転運動などで減少させて圧力を上昇させる形式である。送風機の形式により前述の能力に差があるので,用途に応じて形式を選定する必要がある。一般にターボ形は送風圧は小さいが流量の大きい場合に適し,容積形は送風圧が大きく流量が小さい場合に用いられる。

ファンとブロワーとに分けられるが,いずれも遠心式,斜流式および軸流式がある。なお,ファンには横流式と呼ばれる形式も含まれる。遠心送風機は円周上に配列された多数の羽根からなる羽根車を回転させ,気体を外部より吸い込む。気体は羽根車内でその回転軸に垂直な面内を半径方向に流れるが,この間,気体には羽根車の回転による遠心力が作用するとともに羽根車流路に相対的な速度の変化に基づく圧力上昇が起こり,さらに外部から加えられた仕事で気体の絶対的な速度も増加しながら羽根車より流出する。この速度の増加分は羽根車に続くディフューザー(拡大流路)部で圧力に変換され,昇圧された気体は渦室,吐出管を経て所要の用途に使用される。ターボ形送風機の中では,取扱いガス量は比較的小さいが,段当りでの昇圧能力が大きい。

 斜流送風機は,羽根車部分の流路が回転軸に対し一定角度で傾斜しており,気体も同方向に流れる。作動原理は遠心式と同様であるが,構造上,遠心式と次に述べる軸流式との中間的特性をもっている。羽根車流路は全体に滑らかな曲率をもって変化するため,流路内の速度分布や羽根面上の圧力分布は比較的一様になりやすく,したがって高効率の流量範囲が遠心式より広くなる。

 軸流送風機は,回転体(円筒状)の円周に沿って翼(羽根)が植え込まれている動翼部と,その前・後部のケーシング内面上で同一円周状に翼が植え込まれている静翼部とから構成され,気体はほぼ回転軸と平行に流れる。動翼部を通過するときに仕事が加えられて力学的エネルギー(速度および圧力)が増加し,また,動翼部での速度の増加分は静翼部で圧力に変換される。1段当りの上昇圧力は遠心式,斜流式より低いが,最高効率値は高く,取扱流量も大きい。ただし,遠心式に比べ作動範囲が狭いため,最近では静翼,もしくは動翼に可変方式を導入し,その欠点を補うようにしている。以下各機種ごとに構造,特徴などを述べる。

(1)遠心ファン 羽根車が渦巻形ケーシング(渦室)内に片側支持,もしくは両側支持でおさめられており,吸込口から取り入れられた気体は羽根車を通過して直接ケーシングに流出し,同部を経て外部に送風される。ケーシングはふつうは鋼板製で,片吸込形のほか両吸込形がある。遠心ファンには次の各種のものがある。(a)多翼ファン シロッコファンともいう。主板,側板と呼ばれる2枚の環状円板に32~64枚程度の羽根が円周に沿って配列された羽根車をもつ(図1a)。羽根は薄板を加工して作られ,回転方向に前向きに湾曲させ(前向き羽根という),半径方向高さは小さく,軸方向に長くなっており,主板,側板にリベット締め,または溶接されているものが多い。吐出圧力は通常1.20kPa程度であるが,空調用では約600Pa,工業用では約3kPaのものもある。また,取扱いガス量は2万m3/min程度である。効率は低いが,小型で安価であるため,低圧,多流量に向いており,空調・換気用や産業用の用途がある。(b)ラジアルファン プレートファンともいい,主板および側板に6~24枚の羽根が放射状に配列された羽根車をもつ(図1b)。このうちパドル形と呼ばれるものは,本体から放射状に出ているスポークに羽根をリベット打ちしたものである。羽根形状はその出口角度がほぼ90度で,直線状のものと曲線状のもの(いずれも径向き羽根と呼ぶ)があり,主板,側板にそれぞれ溶接,リベット,またはボルト締めされている。吐出圧力は通常200Pa~4kPa程度であるが,20kPaのものもある。取扱いガス量は2万1000m3/min程度まである。多翼ファンに次いで昇圧能力があり,効率は次に説明する後向きファンよりやや劣るが,構造上,小型・軽量にすることができ,ボイラーの誘引用や集塵装置用,粉末・微小物の圧送用などに広く使用されている。(c)後向きファン ターボファンとも呼ばれ,主板,側板に12~24枚の羽根が配列された羽根車をもつ(図1c)。羽根は薄板を加工して作られ,出口角度が30~50度で回転方向に後向きに湾曲しており(後向き羽根という),主板,側板にそれぞれ溶接,またはリベット締めされている。吐出圧力は通常250Pa~4kPaの範囲であるが,約15kPaまでのものがある。取扱いガス量は4万m3/minくらいまでである。遠心ファンの中では効率がよく,性能も安定しており,広範囲のガス量で使用する場合に適し,製鉄・製鋼用,ボイラー押込用,換気・冷却用など各種産業の送・排風機用として多用されている。なお,2枚の薄板を合わせて翼形にした羽根をもつものをとくに翼形ファンと呼び,後向きファンに比べさらに効率がよく,騒音も少ない。吐出圧力は最高10kPa程度までである。

(2)遠心ブロワー 遠心ファンと同様な構造で羽根車がケーシング内に支持され,羽根車の出口側にディフューザーと渦室が設けられており,気体の圧力回復の機能を果たしている。羽根車は,鋼板,あるいは鍛鋼製の主板,側板に羽根を取り付けたものであるが,低・中速のものではリベット締めとし,高速のものでは溶接したものや羽根を主板と一体で削り出したものもある。羽根形状は後向きファンと同様に羽根出口角度30~40度の後向き羽根で,羽根枚数は8~24である。そのほか,高速の場合は径向き羽根を使用することもある。ディフューザーは案内羽根を取り付けたものとそれがないものとがある。ケーシングは鋳鉄製か鋼板溶接構造で水平か垂直に2分割できるようになっており,片吸込形と両吸込形とがある。圧力上昇範囲は10kPa~0.1MPa,後向き羽根をもつ羽根車1段で20kPa程度まで昇圧できる。ガス量は5000m3/min程度までである。この形式は比較的小流量で上昇圧力が高い場合に適しているが,最近は大型,高速の羽根車を用い,かなり大流量のガスを取り扱うことができるようになった。小流量の場合は片吸込形が,大流量では両吸込形が用いられる。また,高圧力を必要とする場合は羽根車を直列に配置した多段形が採用される。機械工業,製鉄,製鋼業をはじめ,ほとんどすべての分野において各種の気体の送・排気用に広く用いられている。

(3)斜流ブロワー 実用上はそれほど多くないが,遠心式に比べかなり大流量のガスを処理でき,特性上有利な点もみられる。羽根車はふつう片吸込みで側板がなく,主板と羽根の一体構造となっている。羽根は円錐体上に配列され,遠心力の影響を軽減できるように羽根形状にくふうがほどこされている。材質は強力アルミ合金,ステンレス鋼,チタンなどで,削り出しあるいは精密鋳造などで製作される。0.1MPa(ゲージ圧力)程度まで昇圧可能であり,取扱いガス流量は5000m3/min程度までである。用途は遠心式と軸流式の両分野にまたがり,広く産業用として利用されている。

(4)軸流ファン 羽根車には円筒状のボスに8~12枚の動翼を植え込んだものやボスと一体鋳造のものなどがある(図2)。翼は板状のものもあるが,多くは翼形状断面のものが用いられ,鋼板,アルミ合金鋳物,砲金鋳物,合成樹脂などで作られる。動翼根もとと先端との半径比は0.5~0.6程度のものが汎用としてふつうである。圧力を必要とするファンは鋼板製の案内羽根をもっている。ケーシングは円筒状鋼板製である。圧力は1段で換気扇のようにほとんど0のものから10kPa程度まであるが,圧力の高い場合は2~3段式とする。流量は2万5000m3/min程度のものが製作されている。軸流ファンは小型,軽量で大風量が得られ,ターボ形送風機の中でもっとも効率も高いが,作動範囲が狭いので,動翼などを可変としてその範囲を広くするくふうが行われる。用途はトンネル換気,ボイラー,熱交換器の通風用,風胴の送風用など。

 軸流ブロワーはすべて多段式とする必要があり,その構造および材質は低圧用では軸流ファンに,高圧用では軸流圧縮機にそれぞれ類似している。各段の羽根の前,あるいは後ろに案内羽根が設けられ,各段の羽根の取付角の組合せにより風量を大幅に変化させることができる。ガス量は6万m3/min程度まで,圧力は0.1MPa(ゲージ圧)程度までの範囲にあり,鉱山用,ボイラー押込み用,風胴用,トンネル換気用の送風機として用いられる。

おもに回転式が用いられる。この形式はケーシング(シリンダー)内にローター(回転子)がおさめられ,吸い込んだ気体はケーシングとローターに囲まれた空間内に封入され,吐出側に送られる。その際,空間容積の減少などにより昇圧作用が行われる。この送風機には次のような種類がある。

(1)二葉送風機(ルーツブロワーともいう) ケーシング内に2個のローターがおさめられており,互いに平行な回転軸により相反する方向に回転するようになっている。この場合,ローター間の隙間は0.1~0.5mmに保つような構造となっている。ローターは2片の凸部をもち,中央がくびれた形状をしており,ケーシングとローターに囲まれた空間の気体は回転とともに吐出口に送られ,そこの背圧を受け急激に昇圧される(構造は二葉圧縮機と同じであり,図については〈圧縮機〉の項を参照)。ローターは鋳鉄,または軽合金製で,ケーシングは鋳鉄製がふつうである。このような機構のものは高圧用には不適で,1段当りの圧力上昇は10~80kPa程度,流量は0.6~600m3/minくらいである。気体の圧送,空気輸送,汚泥処理などの用途がある。

(2)ベーン送風機 可動翼送風機ともいい,ケーシング(シリンダー)内にローターが偏心して取り付けられており,そのローターに多数の可動翼がおさめられている。ローターの回転とともにそれらの翼は半径方向に移動し,つねにケーシング内面としゅう動しながら密封空間を保ち,昇圧作用を行う(構造はベーン圧縮機と同じであり,図については〈圧縮機〉の項を参照)。可動翼の材料は鋼板のほか,合成樹脂製のものが多用されている。小型,軽量で0.1MPa以下の小流量向きに利用される。

(3)横流ファン 貫流ファンとも呼ばれ,図3に示すように,羽根車は多翼ファンと同様の前向き羽根20~40枚からなっている。気体は羽根車内をその回転軸に直角な面内を二次元的に流れるが,羽根車から与えられる力学的エネルギーはほとんど気体の速度の増加分となる。構造的に羽根車を軸方向に長くでき,細長い扁平な風を送ることができる。流量は500m3/min程度,圧力は1kPaくらいのものが製作されている。エアカーテン用,各種車両の車内送風,冷暖房用,そのほか広範囲の用途がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「送風機」の意味・わかりやすい解説

送風機
そうふうき

外部から動力を供給し、空気またはガスにエネルギーを与えてその体積を圧縮し、比較的低圧で送り出す機械。作動原理や構造は、基本的には液体を扱うポンプと同じである。送風機は圧力上昇の大きさによってファンfan(圧力上昇が約10キロパスカル未満)とブロワーblower(10~100キロパスカル)とに分けられる。なお、圧力上昇が大きく、100キロパスカル以上になる機械を圧縮機という。また、作動原理によって送風機を分類すれば、ポンプの場合と同様に、ターボ型と容積型とに分けられる。

 多翼ファン(シロッコファン)は、短くて幅の広い36~64枚の羽根をもつ羽根車を用いたターボ型ファンで、効率は高くないが、小型かつ低騒音なので、建物や船舶の換気用、小型ボイラーの通風用などに用いられる。ラジアルファンは、半径方向を向いた羽根をもつターボ型ファンで、羽根への異物の付着が少なく、羽根の掃除や交換が容易なため、微粉炭、セメント、チップ、穀物、砂その他粉状物質の空気輸送に用いられる。ターボファンおよびブロワーは、渦巻ポンプと類似の構造をもち、高い効率が得られるので、一般産業用の送風機、排風機として広く用いられている。軸流ファンは、小型軽量で大風量が得られるため、トンネル換気用、ボイラーや空冷熱交換器の通風用などに用いられる。

 ルーツブロワーroots blower(二葉形ブロワー)は、繭形をした2個のローターを使った容積型ファンで、ローターを同期歯車を介して互いに反対方向に回転させることにより、ケーシングとローターの間に閉じ込められた一定体積の気体を吐出し側に移送する。空気や比重の軽いガスの圧送や真空用に用いられ、回転数の変動に順応するのでディーゼル機関の過給や排気に用いられている。

[池尾 茂]

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百科事典マイペディア 「送風機」の意味・わかりやすい解説

送風機【そうふうき】

送風や各種気体の昇圧を行う機械。上昇圧力がゲージ圧で10kPa以下のファンと,10〜100kPaのブロワーに分けられ,0.1MPa以上のものは圧縮機として区別する。軸流送風機,遠心送風機ルーツブロワーなどの形式があり,流量や圧力上昇の大きさに応じて選定される。
→関連項目換気空気機械

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「送風機」の意味・わかりやすい解説

送風機
そうふうき
blower; fan

空気やほかの気体に圧力を与えて送り出す装置。風量,風圧,用途などにより種々の機種があり,ターボ形の軸流式,遠心式,容積形の回転式に大別される。圧力 10kPa ( 0.1kg/cm2 ) 未満のものをファン,圧力 10kPa以上 100kPa ( 1kg/cm2 ) 未満のものをブロワと呼び,これらを総称して送風機という。圧力 100kPa以上のものは普通圧縮機と呼ぶ。

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