単一組織体としての企業グループにおいて,親会社と子会社を一体とした連結財務諸表をつくって決算する方式。欧米では連結ベースで企業を評価することはかなり早くから定着しているが,日本では連結決算制度は1977年度から導入された。その後,上場企業については83年度以降,持分法(持株比率50%超の子会社に加えて同20%以上50%以下の関連会社の損益も連結決算に反映させるやり方)の適用が義務づけられ,本格的連結決算時代を迎えた。連結決算は単独決算と違って企業グループ全体の収益力をはじめとする総合力が判断できることになり,その重要性は高まっている。なお日本では連結決算の方式としてアメリカのSEC(証券取引委員会)基準と日本基準の両方が認められている。
連結財務諸表は,親会社および子会社が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成した個別財務諸表を基礎として作成しなければならない。個別財務諸表を基礎として連結財務諸表を作成するにあたり,これらを単純に合算する手続によるのではなく,次に掲げるような修正手続を適用しなければならない。
(1)経済単位としての企業グループの財政状態を表示するための連結決算手続。(a)親会社の投資勘定とこれに対応する子会社の資本勘定は相殺消去され,親会社の子会社に対する投資勘定に代えて,子会社の資産・負債が親会社のそれと合算されて計上される--資本連結。(b)連結される会社間の債権・債務は相殺消去される--債権・債務連結。このような資本連結および債権・債務連結を通じ,単一組織体としての企業集団の資産,負債,資本が正しく示されることとなり,財政状態(流動性)の表示に役だつ。
(2)経済単位としての企業グループの経営成績を表示するための連結決算手続。(a)連結会社相互間の売上げ・仕入れ等の取引は相殺消去される。したがって連結損益計算書上売上げとして表示されるものは,企業グループ外部への売上げにかぎられることとなる--収益連結。(b)連結会社相互間の販売によって生じた損益は,企業グループ内部での未実現損益であるから,連結決算上消去される。したがって連結財務諸表上表示される損益は,企業グループ外部者との取引によって実現したものにかぎられることとなる--未実現損益の消去。
(3)経済単位としての企業グループの〈その他の剰余金〉の増減を表示するための連結決算手続。〈その他の剰余金〉の増減は,親会社および子会社の損益計算書および利益処分に係る金額を基礎として,連結会社相互間の配当に係る取引を消去して計算する。
以上述べた三つの連結決算手続を通じて,連結財務諸表,すなわち連結貸借対照表,連結損益計算書および連結剰余金計算書が作成されることとなる。これら連結財務諸表は,企業グループの財政状態および経営成績についての真実な報告を提供するものでなければならない。
執筆者:武田 隆二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
支配・従属関係にある複数の会社からなる企業集団を単一の組織体とみなして、所定の会計期間(通常は1年)の財務諸表(財政状態の経営成績を開示する会計報告書)を作成する決算の方式をいう。1999年(平成11)まで、日本の企業会計基準は、法律的に独立した個々の企業を会計の範囲として決算が実施されていた。しかしながら、当時すでに国際会計基準は、グローバルスタンダードとして、支配・従属の関係にあり経済的な意味では統合的な企業経営を遂行する企業グループを単一の組織体とみなす連結会計を原則として財務諸表を作成することとしていた。日本は、日本版金融ビッグバン(金融システム改革)およびその中核となった会計ビッグバン(会計制度改革)を断行して、2000年3月決算から連結財務諸表の作成を主体とする会計基準を強制することとなった。
証券取引法(金融商品取引法の旧称)は1977年(昭和52)から連結財務諸表を導入したが、本格的には1992年3月決算期から有価証券報告書における開示内容に「企業集団等の状況」が盛り込まれてからのことである。さらに連結財務諸表が基本の財務諸表であると制度化されたのは、前記のように2000年3月決算からのことである。商法は、一般に公正妥当な会計慣行・会計基準が連結会計を中心としたことを受けて、2002年5月の改正商法において連結計算書類の制度を施行した。その後、2005年公布の会社法においてもこの制度は継承され現在に至っている。また、連結決算は、2002年4月からグループ経営の親会社による法人税制における連結納税制度の導入にも結び付いている。なお、連結納税制度の採用は会社の選択制となっている。
会計基準の国際会計とコンバージェンス(融合化)の促進とともに、連結決算はますます企業会計における位置づけを強めている。
[東海幹夫]
(小山明宏 学習院大学教授 / 2007年)
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