国家結合の一種で、連邦の組成国間の結合度が緊密になり、連邦自体が国家となり国際法上の能力をもつに至ったもの。連邦の組成国(支分国)は、独自の自治的存在であり、ときに限られた範囲で連邦の憲法によって、一定の国際法上の能力を認められることもある。一般に国際人格をもつのは連邦であり、連邦の内部関係は国内法関係である。連邦の組成国がどの程度の権能をもつかは、連邦の憲法で定められる。単一国家の地方自治体に近いもの(ドイツ、オーストリア、スイスなど)から、旧ソビエト連邦の構成共和国のように、国際機構に加入し、条約締結権を認められるものもある。連邦の実例としては、1787年以後のアメリカ合衆国、1848年以後のスイス連邦、ドイツ連邦共和国、旧ソビエト連邦共和国のほか、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、オーストラリア、オーストリア、カナダ、インド、ミャンマー、ナイジェリア、アラブ首長国連邦など多くの例がある。1990年代にはベルギーとエチオピアが連邦国家となっている。ベルギーは、1993年言語問題に端を発して連邦国家に、エチオピアは、社会主義体制の放棄・混合経済の導入を契機に1995年人民民主共和国から連邦民主共和国になった。
[池田文雄]
『在ナイジェリア日本国大使館編『ナイジェリア連邦共和国』(1982・日本国際問題研究所)』▽『加藤普章著『多元国家カナダの実験――連邦主義・先住民・憲法改正』(1990・未来社)』▽『矢谷通朗著『ブラジル連邦共和国憲法』(1991・アジア経済研究所)』▽『ピエール・エリオット・トルドー著、田中浩・加藤普章訳『連邦主義の思想と構造――トルドーとカナダの民主主義』(1991・御茶の水書房)』▽『中野勝郎著『アメリカ連邦体制の確立――ハミルトンと共和政』(1993・東京大学出版会)』▽『柴宜弘著『連邦解体の比較研究――ソ連・ユーゴ・チェコ』(1998・多賀出版)』▽『石塚さとし著『ベルギー・つくられた連邦国家』(2000・明石書店)』▽『世利洋介著『久留米大学経済叢書 現代スイス財政連邦主義』(2001・九州大学出版会)』▽『加藤普章著『カナダ連邦政治――多様性と統一への模索』(2002・東京大学出版会)』▽『宮本光雄著『国民国家と国家連邦――欧州国際統合の将来』(2002・国際書院)』
(坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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