アメリカ合衆国連邦法の破産法。個人や企業の倒産や破産の処理に関する一連の法律である。連邦倒産法ともよばれる。同法は15章(チャプター)で構成されるが、将来に備えた欠番もあるため、2020年時点では全9章で構成されている(章ではなく条と訳すこともある)。全9章のうち、最初の3章(第1章、第3章、第5章)は、それ以後の章で規定されるさまざまなタイプの破産手続に適用される共通の規則となる。
実際の破産手続のタイプとして日本でもよく知られるのが、通称「チャプター・イレブン」とよばれる連邦破産法第11章である。本章の英語名称は更生(Reorganization)であり、事業継続・企業再建を念頭においた破産法制を意味し、日本の民事再生法に類似する。第11章を適用した企業については、裁判所によって債権の取立てがいったん停止され、120日以内に債権者と調整を行い債務者(経営陣)が再建計画を策定することになる。この計画が、3分の2以上の債権者から同意を得て、裁判所に許可を得ることで、経営陣は退陣することなく、経営を継続しながら経営再建に努める。債権者から合意を得ているため、再建が短期間で進むのがメリットとされるが、かならず成功するわけでもない。過去の適用企業例としては、大手航空会社(ノースウェスト航空〈現、デルタ航空〉、デルタ航空、アメリカン航空、ユナイテッド航空)、大手自動車会社(クライスラー〈現、フィアット・クライスラー・オートモービルズ〉、ゼネラル・モーターズ)、大手小売店(シアーズ・ホールディングス、バーニーズ・ニューヨーク〈2020年2月全店舗閉店〉)、大手投資銀行(リーマン・ブラザーズ〈2008年倒産〉)などがあげられる。なお、本章は理論的には企業、個人のいずれでも適用可能ではあるが、手続面での利便性から個人は第13章(定期的収入のある個人の債務整理:Adjustment of debts of an individual with regular income)を用いる。同章が適用になった場合、手元に自身の資産の一部を残したうえで、策定した弁済計画に沿って弁済を進めることができる。
これに対し、再建を目ざさない清算型倒産処理手続に関する法律は第7章である。英語名称は清算(Liquidation)となっており、日本の破産法に類似する。本章は企業、個人のいずれでも適用可能であり、適用となった場合、倒産手続の開始に伴い、まずは各債権者による個別の債権取立は禁止される。そして、資産を清算して債務の一部を返済完了すると、企業は解散し、個人は残りの債務を免除される。
このほか、地方政府向けの第9章(Adjustment of debts of a municipality)、農業や漁業従事者向けの第12章(Adjustment of debts of a family farmer or fisherman with regular annual income)、国際倒産に関する第15章(Ancillary and other cross-border cases)がある。
[平田英明 2020年10月16日]
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