運搬作用(読み)ウンパンサヨウ(英語表記)transportation

翻訳|transportation

デジタル大辞泉 「運搬作用」の意味・読み・例文・類語

うんぱん‐さよう【運搬作用】

風や水などの自然力が土・砂・小石などを他の場所に運ぶ作用

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精選版 日本国語大辞典 「運搬作用」の意味・読み・例文・類語

うんぱん‐さよう【運搬作用】

  1. 〘 名詞 〙 河水、海水、風などが、土砂砂礫などを運ぶ物質の移動現象。

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改訂新版 世界大百科事典 「運搬作用」の意味・わかりやすい解説

運搬作用 (うんぱんさよう)
transportation

地殻の風化・浸食によって生産された砕屑(さいせつ)粒子が地表または地表付近を流体(水流,氷河,風)または生物の作用によって移動し,堆積するまでの一連の過程を運搬作用という。運搬形式によって,運搬作用は溶流,浮流,掃流に三大別することができる。溶流solutionは化学的風化作用を被った岩石や土壌の可溶性物質が,イオンの形で水に溶解して運搬される現象である。一般に地下水や河川水はカルシウムイオン,ケイ酸イオン,塩素イオン,硫酸イオンなど,流域の地質を反映した成分を溶かして運搬している。溶流の形で運搬される物質は溶流物質と呼ばれる。浮流suspensionは砕屑粒子が流体中を浮遊・懸濁状態で水平的に運搬される様式である。この場合は渦流の垂直成分や上昇流に支えられて粒子が運搬されるので,浮流が持続するには粒子が微細なほどよい。浮流によって運搬される物質は浮流物質(おもに河川水中のもの),懸濁物質または浮遊砂などと呼ばれる。掃流tractionは砕屑粒子が流れの中を底面に沿って運搬される形式で,転動rolling,滑動sliding,躍動saltationという3種類の運搬形式を総称したものである(図1)。掃流によって運搬される物質は掃流物質と呼ばれる。転動および滑動は砕屑粒子が水底を転がったり,滑って運搬されることであるが,躍動は粒子が水底に時どき着底しながら,流水中を跳躍して運搬されることである。躍動は飛砂現象において顕著に認められる。粒子に流れが作用すると,粒子に働く重力,摩擦力,粘性抵抗力,粒子間の衝突による衝撃力などが関係しあって,粒子の運動が起きる。粒子が始動するときの粒径と流速との関係をみると,粒径0.2mm前後の粒子は最も低流速で動き始める(図2)。この粒径より小さい粒子は粒子間の粘着性が増すので,大きい粒子と同様強い流れがないと動かない。水中と空気中での粒子の初動速度は,空気の方が密度と粘性が小さいためにより大きい流速が必要である。

山地斜面,海岸から大陸棚大陸斜面,コンチネンタル・ライズなどの斜面から平たん面に移りかわる場所では,大量の砕屑粒子の重力による大規模運搬がみられる。この現象には,陸上,海底を問わず,地すべり土石流が知られている。とくに海底での重力による堆積物流動現象は堆積物重力流sediment gravityflowと呼ばれ,混濁流turbidity current,水中土石流subaqueous debris flow,粒子流grain flowの三つに分類される。堆積物重力流はまわりの水塊よりも密度が大きい流れであり,代表的な密度流density currentである。一般に堆積物重力流は,浅所に一時的に堆積していた堆積物が,地震や水塊のかくはん作用または堆積物自身の荷重による自然崩壊などによって斜面を流動する現象をいう。非粘着性粒子からなる堆積物は,水中では20度以上の勾配をもつ斜面でないと流動を始めないにもかかわらず,実際の海底調査によると1~4度という低角度の斜面で重力移動が起きている。その理由は,堆積直後の堆積物は間隙率が大きく,間隙に水を満たした状態で平衡状態に置かれているが,これに地震などでせん断力が加わると間隙が縮小し,間隙水の排水が行われ,このときに粒子が流動状態となる,いわゆる堆積物の液状化liquefactionが起きるためである。液状化した堆積物は重力によって海底斜面を長距離にわたって運搬される。この堆積物重力流のうち,混濁流とは,粘着性粒子(粘土)と非粘着性粒子(砂,礫(れき))の混合物で,粘着力が有効に働かない程度の粘土含有率を示すものである。その堆積物は基底部で粒径が大きく,上方へ向かい細粒化する級化層理を示し,タービダイトと呼ばれる。粒子流は非粘着性の砂または礫のみを含む。水中土石流は粘着性粒子を主とするため大小の礫を支えて運搬する。その堆積物は礫を含む泥質堆積物である。タービダイトは現在の海底でも大陸縁辺に,陸上河川の位置と密接な関係を示して大規模に発達している。それらは一般に海底扇状地を作る。なかでもベンガル,インダス,アマゾンの各海底扇状地は有名である。混濁流については多くの研究があり,流れは発生地点から数百kmに達するとみられているが,1000km以上も流れた例も知られている。一般に流速は毎秒10m以上と考えられている。堆積物重力流によって運搬・堆積したとみられる堆積物は地質時代にも非常に多く,フリッシュと呼ばれる地層はタービダイトによって特徴づけられている。

波浪作用の限界である水深200mよりも深い海洋底でも,等深線に沿って流れる底層流または等深線流contour currentによる運搬作用が知られている。この流れの平均流速は毎秒数cmから数十cmに及び,細粒物質を十分浸食,運搬することができる。一般に,混濁流で深海底に運び込まれた砂やシルトは,底層流によって掃流運搬され,再散布される。海洋底には地球的規模の底層流大循環系の存在が知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「運搬作用」の意味・わかりやすい解説

運搬作用
うんぱんさよう

流水や風、氷河、波などの力によって物質を運搬する作用。風は重力に抗して物質を運搬するが、流水は重力に従って物質を運搬する。急斜面上の物質は、流水が生じなくとも、重力の方向に斜面下方に物質を運び、崖錐(がいすい)などの地形をつくる。

 河川の流水は、流速や河床の勾配(こうばい)などの要因によって、礫(れき)、砂、泥や流水中に溶解した化学物質を運ぶ。その運搬形式には掃流、浮流および溶流がある。掃流は、河床付近の砂礫を運搬する形式で、これには「滑動」「転動」「躍動」の三つの型がある。洪水時のように流速が増大すると大量の掃流物質を運び、その量は流速の6乗に比例する。浮流は、細砂やシルト、粘土などを浮遊させて運搬する状態をいい、洪水状態になると河水が濁るのはこのためである。溶流は、河川水中に溶解した物質を運搬するもので、出水時には掃流、浮流物質の量が多いが、通常は溶流物質が多く、年間を通じても溶流物質量がもっとも多い。

[市川正巳・村田明広]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「運搬作用」の意味・わかりやすい解説

運搬作用
うんぱんさよう
transportation

流動する水が岩屑を他の場所へ運ぶ作用。化学的に溶解された岩屑が水の流動とともに運搬される場合を溶流という。岩屑粒が水底に沿って運搬される場合を掃流,水中に保持された状態で運搬される場合を浮流という。掃流状態で運搬される岩屑粒の運動形式は,底面上を滑る場合を滑動,転がる場合を転動,とびはねる場合を跳躍と呼んで区別するが,これらのうちでは跳躍が優勢で,底面付近の水流の乱れと関連して注目されている。浮流で水よりも比重の大きい岩屑粒が水中に保持されるのは水流の乱れに基づく鉛直上方の流速成分によるもので,水流の流速が増大して乱れが激しくなると,浮流岩屑粒の濃度が大,すなわち水の濁りが濃くなる。ある限度以上の濃度で細粒の岩屑が流れる場合を泥流,粗大な岩塊も混って流れる場合を土石流という。

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世界大百科事典(旧版)内の運搬作用の言及

【川】より

…このようにして深い谷が形成される。
[運搬]
 河川に供給された岩屑などを流水が運ぶ作用を運搬作用という。水量が多く,勾配が急で,流速が大きい河川では,岩屑などを運搬する能力が大きい。…

※「運搬作用」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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