手縫いの基本になる縫い方の一種。明治の初めからの和裁教育で使われ始めたことばである。ぐし縫い、なみ縫いともいう。2枚または2枚以上の布をあわせて、表裏とも木綿は3~4ミリメートル、絹布は2~3ミリメートルの針目で縫い合わせる。ほかに和裁技術士の間で行われている絎(く)け方で、折り合わせた布の間を泳がせるようにして、針を進める方法も運針という。運針の上手、下手は、着物の仕立て栄えと、仕立てに要する時間に影響するので、十分に練習する必要がある。
運針の正しい姿勢は、背を伸ばし、下腹に力を入れ、肩の力は抜いて、両手を肘(ひじ)の高さにして布を持つ。
[岡野和子]
右手中指の関節と関節の間に指貫(ゆびぬき)をはめ、針を布に2、3針刺して、糸を通した針穴の所を指貫にあて、中指、薬指、小指の3本で布を握り持つ。左手は針先より20センチメートルぐらい離して、人差し指以下4本で布を握り、親指は縫う線に対して直角になるように布を持つ。目と布との距離は30センチメートルぐらいとする。長針のときは、皿付き指貫をはめ、針を手のひらの皿にあてて、つかみ針で縫う。中指を固く握らないので楽であること、一度に多く縫えることなどの利点があるが、折れないように太めの針を用いるため、針目が大きくなる。
[岡野和子]
右手の親指で針を布の向こう側に押し、同時に人差し指は布から離し、左手の布を手前に引く。次に右手の人差し指で布の手前側へ針先を押し、同時に親指を布から離し、左手の布を向こうに押すと、その一針ごとにひだができる。これを交互に繰り返し、針の長さいっぱいになるまで縫う。
[岡野和子]
左手のところまで縫い進んだら、右手の指先の腹でよく糸をしごき、また先に縫い進める。最後に左指先で全体の糸こきをするが、糸こきが不十分だと、仕上りが汚く、布も痛みやすい。針目はまっすぐで、流れ針のないこと、針目の大小、表裏の不同針がないことがたいせつである。
以上のほか、厚地縫いの場合は、針目が流れないように一針ごとに針を抜く一針抜きをする。さらにごく厚地のとき、または多くの布を重ね縫いするときは、手前から向こうに針を刺して抜き、次に向こうから手前に針を刺して抜く、刺し針縫いの方法もある。
[岡野和子]
…その縫い方は必要に応じて各種あり,くけや止め,しつけとともにきせをかけて縫い目を見せず,美しく丈夫な仕上りを心がける。基本は並縫い(ぐし縫い)で,運針(うんしん)として指貫(ゆびぬき)を用い最初に練習する。袋縫い,返し縫いなどの部分による縫い方,返し止め,すくい止め,袖口や袖付けなどの止め,本ぐけ,耳ぐけ,三つ折りぐけなどのくけ,結びつぎ,重ねつぎなどの糸のつぎ方,二目落し,三目落しなどのしつけなど技法は数多い。…
※「運針」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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