改訂新版 世界大百科事典 「過形成」の意味・わかりやすい解説
過形成 (かけいせい)
hyperplasia
組織を構成する細胞のうち,特定の細胞が種々の刺激をうけて細胞分裂をおこし,細胞数が過剰にふえるために組織や器官が大きくなること。増生ともいう。細胞増殖によるといっても,一方的に増殖をつづける腫瘍とは違って増殖には限界があり,また刺激がなくなれば組織の大きさは元にもどる可逆的反応である。過形成の原因には,作業負荷,ホルモン作用,機械的刺激などがある。また再生時の一過性のものもある。過形成を示す組織では,ほとんどすべて機能の増大を伴う。ホルモンの作用による場合には,ホルモンの影響下にある臓器に最も著しくみられるが,多くの場合,脳下垂体とその支配下にある内分泌器官との間の均衡の乱れから生じる。前立腺肥大は,男性ホルモン刺激によっておこる腺上皮の過形成によるもので,前立腺過形成というべきものである。慢性腎不全では,排出機能が侵されて血中リン酸塩濃度が高くなると,上皮小体ホルモンの分泌を増すために,上皮小体の明細胞の過形成がおこる。再生時におこる例としては,出血後に骨髄でおこる著しい赤芽球の造血がある。上皮の過形成には,機械的刺激による皮膚の角質化の亢進(〈たこ〉など),カビなどの炎症による表皮の過形成,胃潰瘍辺縁粘膜の腺窩(せんか)上皮の過形成がある。
執筆者:山口 和克
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報