違憲審査権(読み)イケンシンサケン

デジタル大辞泉 「違憲審査権」の意味・読み・例文・類語

いけん‐しんさけん〔ヰケン‐〕【違憲審査権】

違憲立法審査権

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「違憲審査権」の意味・わかりやすい解説

違憲審査権[アメリカ合衆国憲法]
いけんしんさけん[アメリカがっしゅうこくけんぽう]

アメリカ合衆国の連邦最高裁判所が,連邦議会の制定した法律,アメリカ合衆国大統領の行なった処分についてアメリカ合衆国憲法に違反するか否かを審査すること。裁判所がこのような違憲審査権を有することは,アメリカ合衆国憲法には明文の規定がなく,1803年,連邦最高裁判所 J.マーシャル長官が,マーベリー対マディソン事件において初めて判示したところに由来する。この事件はアダムス大統領によってコロンビア地区の治安判事に任命された原告が,事務上の都合で辞令書の交付を受けるにいたらない間に,同大統領が任期満了によって退任,新たにジェファーソン大統領のもとでマディソン国務長官が就任し,同国務長官が辞令書の交付を拒絶したので,連邦最高裁判所に国務長官を相手取って辞令書を交付させる令状を発せられるように請求したものである。最高裁判所は,原告が右辞令書の交付を求める権利を有すること,この権利が侵害されたこと,裁判所法には最高裁判所がその令状を発する規定の存することを認めた。しかし,最高裁判所が第1審の管轄権を有するのは,憲法によって (1) 大使公使など外交使節に関する事件,(2) 州が当事者である事例に限られており,裁判所法が最高裁判所に広く事件のいかんを問わず令状を発する権限を与えたことは,憲法に抵触すると判断した。この事件が先例となって,アメリカ合衆国最高裁は,しばしば合衆国議会の制定した法律や大統領のとった措置を違憲と判断するようになった。

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世界大百科事典(旧版)内の違憲審査権の言及

【権力分立】より

… 日本国憲法は,国会を〈唯一の立法機関〉(41条)とし,〈行政権は,内閣に属する〉(65条)と述べるとともに,〈すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する〉(76条1項)と規定し,立法・行政・司法の3権の分立を基本構造として採用した。大日本帝国憲法では,天皇が〈統治権ヲ総攬〉(4条)するという根本的なたてまえのもとで,天皇の立法権の行使を帝国議会が〈協賛〉(5条)し,行政については国務大臣が〈輔弼(ほひつ)〉(55条)し,司法権も〈天皇ノ名ニ於テ〉裁判所がおこなう(57条)という構造であったのと比べ,日本国憲法は三権分立の根本原理により忠実であるが,三権分立の骨格を前提としたうえで,国会を〈国権の最高機関〉(41条)として位置づける点で,近代憲法確立期の議会中心主義を継承すると同時に,司法権に法令違憲審査権を与える(81条)点で,現代憲法に共通する傾向をもあわせ示している。
[権力分立思想の系譜]
 権力分立論には,古代ギリシアのヒッポダモスやアリストテレスの混合政体論にさかのぼる背景があるが,近代憲法の権力分立に大きな影響を及ぼしているのは,ロックとモンテスキューの思想である。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」