(読み)ユウ

デジタル大辞泉 「邑」の意味・読み・例文・類語

ゆう【邑】[漢字項目]

人名用漢字] [音]ユウ(イフ)(漢) [訓]むら
人の集まり住む区域地方の町や村。「郷邑城邑村邑都邑
諸侯などの領地。「采邑さいゆう封邑ほうゆう
[名のり]くに・さと

おお‐ざと〔おほ‐〕【×邑】

漢字つくりの一。「郡」「部」などの右側の「阝」の称。「阝」が漢字の左側にある「こざとへん」に対していう。おおざる。のぼりざと。

おお‐ざる〔おほ‐〕【×邑】

おおざと」に同じ。

ゆう〔イフ〕【×邑】

人の集まり住む所。むら。町。
諸侯・大夫の領地。封土

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精選版 日本国語大辞典 「邑」の意味・読み・例文・類語

ゆうイフ【邑】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 人の集まり住むところ。むら。さと。町。
    1. [初出の実例]「比者、遷都易邑、揺動百姓、雖鎮撫、未安堵」(出典:続日本紀‐和銅二年(709)一〇月庚戌)
    2. [その他の文献]〔論語‐公冶長〕
  3. 諸侯・大夫の領地。封土。〔詩経‐大雅・文王有声〕
  4. おおざと(邑)

おお‐ざとおほ‥【邑・阝】

  1. 〘 名詞 〙 漢字の旁(つくり)の一つ。「郡」「郎」「部」などの「阝」。「邑(里の意)」の字の変形したもの。この旁を持つ字は、字典で邑部に属する。おおざる。のぼりざと。

おお‐ざるおほ‥【邑・阝】

  1. 〘 名詞 〙おおざと(邑)〔運歩色葉(1548)〕

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普及版 字通 「邑」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 7画

[字音] ユウ(イフ)
[字訓] みやこ・まち・むら

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
囗(い)+巴。囗は都邑の外郭、巴は(せつ)で人の坐する形。城中に人のある意で、城邑・都邑をいう。〔説文〕六下に「國なり。囗に從ふ。先王の制、大小り。に從ふ」とあり、を大小の節の意とするが、は人の踞する象。囗の下に三人相並んで立つものは衆、卜文に口下にをしるす。卜辞に大邑商の名がみえ、王都を大邑といった。周初の新邑は成周、のちの洛陽で、成周とは武装都市の意。〔左伝〕にみえる外交の辞に、自国のことを弊邑・小邑という。また村落をいい、金文の〔(そはく)〕に、二百九十九邑と民人都鄙とを賜与することをいう。〔左伝、荘二十八年〕に「そ邑に宗先君の(位るをと曰ひ、無きを邑と曰ふ」とみえる。

[訓義]
1. みやこ、くに。
2. まち、むら、さと。
3. 行政区域の名。九夫をもって一井、四井をもって一邑とする。
4. 悒(ゆう)と通じ、うれえる。

[古辞書の訓]
名義抄〕邑 ムラ・サト・クニ・ウレフ

[声系]
〔説文〕に邑声として・悒・など四字を収める。邑声の字に〔詩、召南、行露〕「厭(えんいふ)たる行露」のように、潤う状態をいうものが多いのは、形況の語としてその音が用いられたからであろう。厭ip-jpは畳韻、形況の語である。

[熟語]
邑屋・邑郭・邑君・邑戸・邑侯・邑豪・邑宰・邑子・邑社・邑聚・邑庠・邑誦・邑紳・邑人・邑制・邑中・邑長・邑廛・邑土・邑党・邑民・邑門・邑野・邑邑・邑落・邑里・邑吏・邑閭・邑・邑・邑老
[下接語]
鬱邑・遠邑・下邑・巌邑・畿邑・虚邑・郷邑・京邑・建邑・県邑・古邑・故邑・公邑・国邑・采邑・祭邑・山邑・子邑・私邑・州邑・聚邑・小邑・城邑・食邑・新邑・陬邑・井邑・絶邑・宗邑・村邑・大邑・通邑・都邑・鄙邑・富邑・敞邑・辺邑・偏邑・奉邑・封邑・良邑

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改訂新版 世界大百科事典 「邑」の意味・わかりやすい解説

邑 (ゆう)

古代の集落総称。邑の字は,土地,区画を示す口と,ひざまずいた人を示す巴との会意文字で,人間の居住地,集落を表す。都,郷などの字の旁(つくり)としてつく阝(おおざと)は邑の変形である。太古から春秋時代中期までの集落は,すべて邑と考えることができる。邑は,多くの場合囲壁をめぐらし,その外側に耕地を所有した。人びとは,宗廟とを中心に,この邑で共同体的生活を営んでいたと考えられる。それは社会構造の基礎をなしており,当時の国はすべてこのような一種の都市国家邑制国家)であった,と考える説が有力である。都市国家が領土国家へと発展するにつれて,邑という語は都市,集落一般を意味するようになっていった。秦・漢時代の県,郷,聚,亭は,すべて邑が発展し,規模や性格によって分化したものということができる。後世には県を指して邑と呼ぶことが多く,特にその雅名としてよく使われる。
執筆者:

朝鮮では郡の中心集落をさす。広義には州・府・郡・県などと呼ばれる行政区画を総称し,李朝時代(1392-1910)を通じて330前後が存在した。地方官(守令)の支配拠点である郡衙郷吏の執務所である作庁(人吏庁),両班ヤンバン)組織の事務所である郷庁などが集中し,地方政治の中心であった。邑底と呼ばれる集落内には定期市が立ち,一郡の物資集散地として地方経済の中心でもあった。現在でも多くが郡庁所在地として一地方の中心地となっている。通常,〈邑〉は城壁(邑城)で囲まれ,外部からの出入りは数ヵ所の城門に限られていた。邑城の規模は数百m四方が多く,居住人口は開城や平壌などを除けば1000~3000人程度である。邑内図などがほとんど伝存せず,〈邑〉の集落構造や景観の研究は今後の課題である。なお日本植民地下の1931年,邑面制を施行し,〈〉の中で人口が多く商工業が発達したものを〈邑〉と称するようになった。これは日本の市町村制における〈町〉にあたる。
執筆者:

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「邑」の解説

邑(ゆう)

邑の字形は,城壁などの一定の領域と,ひざまずいた人の姿をあわせたものである。大きな都市から小さな集落まで広くさす。中国古代の都市を邑に代表させて,都市国家を邑制国家ともいう。この場合の邑の内部は地縁ではなく,血縁によって結びついていた。殷(いん)周の国家は,王室の大邑を中心として大小の邑が累層的に結びついた構造としてとらえられている。

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旺文社世界史事典 三訂版 「邑」の解説


ゆう

中国の先史・古代初期の農耕集落
字の意味は土壁で囲まれた集落のこと。氏族共同体の祭祀と生活の単位で,のち部族国家の中心地の意味に発展し,その有力なものを大邑といった。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【守令】より

…員(ウオン)ともいう。道の長官である観察使の監督下で,(府,大都護府,牧,都護府,郡,県等,道内の行政区画の総称)内の統治にあたった。その任務は守令七事と呼ばれ,農業を盛んにすること,戸口数を増やすこと,学校を興すこと,軍政を修めること,賦役を均等に課すこと,裁判を迅速に行うこと,奸悪な人物をなくすことであり,この七事を基準にして観察使が各守令の勤務評定を行い,善・殿・悪・最の4等級の評価を中央に報告する仕組みであった。…

【都市】より

…第2次大戦後の中国史研究の進展,なかでも中国における考古学の成果の増大と,他方ヨーロッパ近代の意味づけの変化とが相まって,中国の都市に対して異なった見方が提出されるようになってくる。
[邑から都市へ]
 中国文明が発祥した黄河中流域では,自然環境を反映して邑(ゆう)と総称される都市的集落が叢生した。邑を都市(城市)国家と理解する学者も多いが,墻壁で囲繞した市域のまわりは田土で,そこに居住する人民の大部分は農民で占められていた。…

※「邑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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