里(さと)(読み)さと

日本大百科全書(ニッポニカ) 「里(さと)」の意味・わかりやすい解説

里(さと)
さと

人の住まない山に対し、人家の集まっているところをいう。古くは律令(りつりょう)制度における地方行政区画の呼称の一つで、国郡里(こくぐんり)制の郡の下に属し、50戸を1里とする最小単位であったが、のちに郷(ごう)に改称された。また貴族社会で、宮廷を内(うち)、内裏(だいり)というのに対して、それ以外の場所をいい、とくに宮仕えをする人たちが自分の住居や実家、生家をさして称する。同時に、単に自分が住んでいたところをもさし、「ふるさと」の里がその例である。つまり、自分が育ち、生活した本拠となったところをさす。したがって、妻や養子が実家をさし、奉公人が生家をさすのも、これに基づく。また田舎(いなか)を意味したり、寺に対して俗世間、在家を意味したり、「(お)里が知れる」のように、育ち、生い立ち、素姓の意で用いられるのも同様である。さらに里親里子のように、養育料を出して子供を他人に預けることも、その場所が生育する本拠となるべきところだからである。そのほか、江戸時代には遊里の称ともなったが、これは当時の遊里が多く新開地につくられた特殊な集落、つまり「色の里」というような意味からであろう。また遊里語では「やぼ」の意で用いられるなど、きわめて多義に用いられる語である。

[藁科勝之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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