金閣寺(三島由紀夫の小説)(読み)きんかくじ

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

金閣寺(三島由紀夫の小説)
きんかくじ

三島由紀夫長編小説。1956年(昭和31)新潮社刊。「私」は父から金閣の美しさを教えられ、金閣寺徒弟になる。戦争末期の一時期に金閣との親和感をもつことのできた「私」は、敗戦とともに金閣への距離感を意識するが、金閣の幻影はなおも「私」の心を支配する。戦後の金閣寺の内部堕落を知るにつれて「私」は金閣を焼くことを思い立ち、やがて放火する。三島の作品のうちでもっとも芸術的に完成されたものの一つで、ここでは金閣は美の象徴であるとともに、人の心を俗世間から孤立させる魔力でもある。戦中戦後のとらえ方のうちに、三島の昭和史への見方が投影されていると考えられる。

磯田光一

『『金閣寺』(新潮文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

自動車税・軽自動車税

自動車税は自動車(軽自動車税の対象となる軽自動車等および固定資産税の対象となる大型特殊自動車を除く)の所有者に対し都道府県が課する税であり、軽自動車税は軽自動車等(原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自...

自動車税・軽自動車税の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android