政治党派が議院政党化する過程で疎外された党員たちによる行動団体。帝国議会の開設時(1889)に、政治党派は議員集団としての院内集団と非議員集団としての院外集団に分化した。政党政治が確立し、政党が議員集団として機能するようになると、院外集団は政党本部に直属する行動隊としての院外団に制度化されることになった。院外団の行動隊機能は、やがて、政党系列化された国家主義団体に受け継がれ、院外団は自らの存在意義を見失うことになる。
立憲政友会が院外団を正規の機関として発足させたのは、20世紀の初頭であった。立憲政友会が結党される前の自由党段階において、院外者の組織は壮士団の形をとっていた。名望家集団としての自由党にあって、壮士団は地方組織の役割を果たしていた。村野常右衛門(つねえもん)に代表される三多摩壮士の動向が壮士団の代表例である。大正政変を機会に政治活動を開始した大野伴睦(ばんぼく)は、村野への接近から政友会院外団員となった。大野は、院外団出身政治家の代表例であるが、村野と大野のつながりは、そのまま壮士団から院外団への転化の過程を示すものとなっている。
大正政変時の活躍で、院外団は存在意義を認められたが、その活動内容は暴力団に近いものであった。かつての民党の壮士団にみられた暴力主義的行動様式は、そのまま吏党の院外団組織に受け継がれ、やがて国家主義団体にその地位を奪われる要因となっている。日本の政党が近代政党化する過程で露呈させた徒党的性格は、院外団にもっとも端的に現れていた。
アメリカの政党組織におけるマシーンやロビイングなどは広義の院外集団機能の発揮であるが、そこでは暴力主義が厳しく規制されている。イギリスの議会労働党に対する労働党大会のあり方も、広義の院外集団の一形態を示しているが、議員集団への寄生性は見受けられない。ロビイングも労働党大会も、政策形成過程における圧力団体機能の発揮を目ざすものとなっていて、日本におけるかつての院外団とは異質である。
[高橋彦博]
第2次大戦前の日本の政党政治において議会の外で政党活動を行う議員以外の党員およびその団体をいう。日本の政党は自由民権運動に由来するが,帝国議会開設後は議員を中心とした議会内政党の性格を強める。そこでは,議員が政党をつくるのであって政党が議員を出すのではないから,議員以外の党員の存在は限定されるし議会外における政党の日常的な活動というイメージは成立しない。落選代議士や壮士と呼ばれた政治青年の集まる院外団の主な仕事は党幹部の護衛,選挙時の有権者狩出しなどで,反対党の演説会荒しはとくに有名であった。大正政変の際の倒閣運動でその活躍が注目されはじめ,昭和初期の政友,民政各党には常時数十人から数百人の院外団がいたという。戦後,政党の組織化が進むと,かつて院外団を構成した人々のうち政治家予備軍は党組織や議員秘書集団に吸収されていき,院外団のアウトロー的機能は一部の右翼団体にうけつがれた。
執筆者:都築 勉
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