東北地方の太平洋岸に設定されていた国立公園で、2013年(平成25)に三陸復興国立公園に編入された。陸中海岸国立公園は1955年(昭和30)の指定。面積122.12平方キロメートル。北は岩手県久慈市(くじし)から南は宮城県気仙沼市(けせんぬまし)まで延長約180キロメートル。地形的には宮古(みやこ)市を境として北は隆起性の海岸段丘、南は沈降性のリアス海岸で、最南部の気仙海岸以南は沈降性海岸であるが、その後の隆起運動による段丘の発達がみられるなど変化に富む。地質的には、北上(きたかみ)高地の骨幹をなす秩父中・古生層と、これに貫入する各種の火成岩、中生代白亜紀の形成にかかる白亜紀層、一部は古生層の石灰岩層などからなる。
景観の特徴としては段丘崖(がい)と岩礁風景、リアス海岸、アカマツを主とする沿岸自然林があげられる。田野畑(たのはた)村北山崎の一帯は200メートルに達する海食崖や、洞門、巨岩があり、「海のアルプス」とも称される公園屈指の景観を展開する。宮古市田老(たろう)和野(わの)、宮古市浄土ヶ浜、山田町船越大島(ふなこしおおしま)などには中生代末の白亜紀層の砂岩・礫(れき)岩の互層が露出し独特の景観をみせる。また遠浅の砂浜が続く陸前高田市の高田松原(2011年東日本大震災により消失)、巨釜(おおがま)・半造(はんぞう)などの奇勝を呈する唐桑(からくわ)半島などの景勝地が連続する。陸前高田市椿島(つばきじま)のウミネコ、宮古市日出島(ひでじま)のクロコシジロウミツバメ、釜石(かまいし)市三貫島(さんがんじま)のオオミズナギドリ、ヒメクロウミツバメのそれぞれ繁殖地は国指定天然記念物。植物はアカマツの自然林のほか、南部にはヤブツバキ、モミ、タブノキなどの暖帯系植物がみられ、山田町の大島は太平洋岸のタブノキの北限地。北山崎にはシロバナシャクナゲの自生地がある。寒暖両流に洗われる海岸は好漁場で、磯(いそ)漁、養殖漁業のほか、流入河川のサケ漁も盛ん。公園計画による施設は休暇村陸中宮古などがある。おもな交通機関として、海岸沿いを走る三陸鉄道リアス線、国道45号があり、海から海岸を探勝する遊覧船もある。
2013年5月、東日本大震災被災地である三陸地域の復興に貢献するために、青森県の種差海岸階上岳(たねさしかいがんはしかみだけ)県立自然公園(およびその周辺の一部地域)を編入して、三陸復興国立公園として再編成された。同国立公園は、2015年にはさらに南三陸金華山国定公園も編入した。
[金野靜一]
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