(読み)クマ

デジタル大辞泉 「隈」の意味・読み・例文・類語

くま【×隈/曲/×阿】

曲がって入り込んだ所。また、奥まった所。もののすみ。片隅。「川の―」
「光到らぬ―もなし」〈樗牛滝口入道
物陰になっている暗がり。陰になった所。
停車場ステーシヨン前の夜の―に、四五台朦朧と寂しく並んだ車」〈鏡花歌行灯
(「暈」とも書く)色の濃い部分と淡い部分、あるいは、光と陰とが接する部分。また、色の濃い部分。「目の下に―ができる」
夕暮れの空の濃い―をいろどっている天王寺のあたりを」〈田村俊子木乃伊口紅
隠していること。心に秘めた考え。秘密。
「人の心の―は映すべき鏡なければ」〈樗牛滝口入道
隈取り」の略。
十分でない部分。欠点。
「その事ぞとおぼゆる―なく」〈・浮舟〉
へんぴな所。片田舎
「山里めいたる―などに」〈橋姫

わい【隈】[漢字項目]

人名用漢字] [音]ワイ(漢) [訓]すみ くま
〈ワイ〉奥まった所。すみ。「界隈
〈すみ(ずみ)〉「隈隈四隈

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精選版 日本国語大辞典 「隈」の意味・読み・例文・類語

くま【隈・曲・暈・阿】

  1. 〘 名詞 〙
  2. [ 一 ] 他と境界を接する地点、奥まった場所をいう。
    1. 道や川などの折れ曲がっている所。曲がりかど。
      1. [初出の実例]「川区(クマ)に 立ち栄ゆる 百足(た)らず 八十葉(やそば)の木は」(出典:日本書紀(720)仁徳三〇年九月・歌謡)
      2. 「山の際(ま)に い隠るまで 道の隈(くま) い積るまでに つばらにも 見つつゆかむを」(出典:万葉集(8C後)一・一七)
    2. 奥まったところ。物陰。かたすみ。
      1. [初出の実例]「山の阿(くま)に伏せ隠し、賊(あた)を滅さむ器(つはもの)を造り備へて」(出典:常陸風土記(717‐724頃)行方)
    3. へんぴな所。片田舎。
      1. [初出の実例]「山里めいたるくまなどに、おのづから侍るべかめり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)橋姫)
    4. ( 形式名詞的に用いて ) ところ。点。打消「なし」を伴って、全体にわたっている意にいう。
      1. [初出の実例]「少しゆゑづきてきこゆるわたりは、御耳とどめ給はぬくまなきに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)末摘花)
      2. 「くまもなくまちけれども、案内者にて、おもはぬしげみ、道をかへ」(出典:曾我物語(南北朝頃)一)
  3. [ 二 ] 色や影の濃い部分。また、色の重なった部分。
    1. 曇り。くらがり。かげ。
      1. [初出の実例]「月の少しくまあるたてじとみのもとに立てりけるを知らで」(出典:源氏物語(1001‐14頃)賢木)
    2. 心の中の暗い部分。心中に秘めたこと。隠していること。秘密。悩み。
      1. [初出の実例]「秋の夜の月の光は清けれど人の心のくまは照らさず〈よみ人しらず〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)秋中・三二三)
    3. 色と色、光と陰が接するところ。色や光と陰などが重なりあってぼけた部分。
      1. [初出の実例]「かきつばた白と紫くまなして流るる水に鯉の餌(ゑ)かはむ」(出典:舞姫(1906)〈与謝野晶子〉)
    4. 疲労や不眠などにより目のまわりにできる黒ずんだ部分。
      1. [初出の実例]「何だか睫毛(まつげ)が重くなって、眼のまはりに隈がかかったやうな」(出典:地獄変(1918)〈芥川龍之介〉一二)
  4. [ 三 ]くまどり(隈取)」の略。
    1. [初出の実例]「長い瞼毛(まつげ)周囲(まはり)を青インキで濃く隈をつける」(出典:桐の花(1913)〈北原白秋〉ふさぎの虫)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「隈」の意味・わかりやすい解説


くま

大分県日田市(ひたし)の中心地区。旧隈町。三隈(みくま)川右岸に位置する。1594年(文禄3)以降日隈城(ひのくまじょう)の城下町として栄えた。江戸時代の農学者大蔵永常(おおくらながつね)の生地

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「隈」の意味・わかりやすい解説


くま

暈とも書く。東洋画の技法。墨や色彩の濃淡によって画面に凹凸感,立体感を与えたり,装飾的効果をあげる手法。陰になる部分を次第に濃くぼかしていくのが普通であるが,逆に突き出た部分や光の当る部分に白色や明るい色を加える場合もあり,これを照隈 (てりぐま) あるいは反隈 (かえりぐま) と呼ぶ。また隈を墨のみでとるか色彩でとるかによって墨隈,色隈の呼称があり,輪郭の内側をぼかすか,背景を濃くするかで内隈,外隈の別がある。

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