粗放農業extensive agricultureに対する語で,土地利用の集約度の高い農業をいう。集約度とは一定の土地に対する投下費用の大きさのことで,土地面積当りの農業経営費(物財費,労働費,資本利子)でみるのが一般的であるが,現物量でとらえて議論する場合もある。また経営費の内容からみて,労働費の比重が相対的に高いものを労働集約的農業,物財費の高いものを資本集約的農業という。
古い時代ないし未開社会の農業では,労働投入も資本財投入も少ない粗放農業が支配的であるが,経済発展とともに,より多くの労働や資本財(機械,施設,農薬,肥料,材料等)を投入して,労働生産性とともに土地生産性(面積当り収量ないし生産額)を高める方向,つまり集約的(とくに資本集約的)農業の方向へ発展するのが一般的である。たとえば,西ヨーロッパの穀作農業における三圃式農業から穀草式農業を経て輪栽式農業に至る発展はその一例である。空間的にみても,交通地位のよい都市近郊農業では園芸などの集約農業が,遠隔地では牧畜などの粗放農業が営まれる傾向がある。また,人口稠密(ちゆうみつ)なアジアのモンスーン地域では労働集約的農業が,アメリカやオーストラリアなどの新大陸では大型機械による労働粗放的な資本集約的農業が展開している。最近の先進国農業の一部には,経営組織としては従来の多部門からなる複合経営(複合農業経営)が専門化,単一化して単純化する,いいかえれば組織集約度としては粗放化するが,それぞれの部門の経営管理の集約度は高めるという形での動きがみられる。
執筆者:和田 照男
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単位面積当りの資本と労働の投下量が比較的多い農業をいい、このように農業経営の集約度を高めることを農業集約化という。
[編集部]
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…畜力利用(耕耘,運搬など)が進んだのは第2次大戦前後,中・小型の農業機械が普及してきたのは1950~60年代以降で,それまでは基本的に手労働の農業であった。また肥料の多用も顕著な特徴で,こうして多肥多労の集約農業として展開し,土地生産性(単位面積当り収量)が高く,またそれを追求することが主要な方向とされてきた。(3)耕地の約半分を占める畑地で,多種多様な畑作物の生産がなされてきたことである。…
※「集約農業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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