翻訳|employment
使用者が労働者を雇って労働に従事させること。雇用ということばが自営業主、家族従業者をも含めた就業の意味に解されることもあるが、使用・従属関係が賃金労働に一般化される資本主義のもとでは、自営業主および家族従業者を除く被用関係を意味するのが普通である。雇用関係を結んでいる者が全就業者中に占める割合すなわち雇用者率(雇用者比率ともいう)は、資本主義の発展とともに上昇する傾向をもつ。
日本の雇用者率は、1955年(昭和30)に43.5%にすぎなかったものが、高度成長を経て急速に上昇した。1960年の53.4%、1980年の71.7%を経て2008年(平成20)には87.0%に達しており、欧米諸国の水準(アメリカ93.0%、イギリス86.6%、フランス91.1%、スウェーデン89.6%、2008)に類似する。
雇用者は、第一次産業に相対的に少なく、第二次産業と第三次産業、とくに第三次産業に多いことから、雇用者率の上昇は、第三次産業に働く労働者の増加としても現れる。第三次産業雇用者がすべての雇われて働く人々に占める比率は、2008年に68.5%であり、欧米諸国の水準(アメリカ78.8%、イギリス77.2%、フランス74.2%、スウェーデン76.2%、2008)と同じように高い。雇用の第三次産業化もしくは雇用のサービス化と称される事態である。雇用者率の上昇は、女性の働く機会の拡大の過程でもある。働き続ける女性は、女性の高学歴化や家族形態の多様化、雇用機会の均等とも相まって増加した。労働力中の女性比率は、1970年(昭和45)に33.5%であったものが、1980年の34.4%を経て2008年には41.6%に達した。欧米諸国の水準(アメリカ46.7%、イギリス46.2%、フランス46.8%、スウェーデン47.3%、2008)をやや下回るとはいえ、上昇傾向をたどることにおいて同じである。雇用の女性化あるいは労働力の女性化と称される事態である。
パートタイマーが第三次産業に多いことに示されるように、雇用のサービス化は、パートタイマーや臨時雇い、人材派遣などの非正規雇用の増加を伴う。非正規雇用者の比率は、1990年の20.2%から2000年の26.0%を経て2009年には33.4%を記録した。雇用の非正規化あるいは雇用の不安定化といわれる事態である。
[三富紀敬]
『鹿嶋敬著『雇用破壊――非正社員という生き方』(2005・岩波書店)』▽『竹信三恵子著『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…労働市場が内部化される基本的要因は三つある。それは,(1)特定の企業にしか通用しない技能を備えた労働力を,企業が必要とすること,そのために(2)職場で仕事をしながら技能を習得する職場訓練(OJT)が不可欠であること,そして(3)雇用の安定性を維持するための雇用慣行が形成されること,である。
[企業内および外部労働市場]
企業内労働市場と外部労働市場とは,労働者の入職・離職によって結ばれている。…
※「雇用」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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