離職率(読み)リショクリツ

デジタル大辞泉 「離職率」の意味・読み・例文・類語

りしょく‐りつ【離職率】

労働人口うち、ある一定期間に新たに離職した人の割合企業などの労働者在籍数に対する新たな離職者の割合。⇔入職率。→労働移動者

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「離職率」の意味・わかりやすい解説

離職率
りしょくりつ

労働者全体のうち、その年に新たに離職した人数の割合。その年に新たに入職した人数の割合は入職率という。日本では厚生労働省(2001年以前は労働省)が雇用動向調査の一項目として入職率、離職率を調査・公表している。1964年(昭和39)から上半期(1~6月)、下半期(7~12月)に分けて年2回実施している。同調査の定義では、常用労働者(期間を定めずに雇われていている者、または1か月以上の期間を定めて雇われている者)のうち、調査対象期間中に事業所を退職したり、解雇されたりした者を離職者とし、他企業への出向者や出向復帰者も含まれる。離職率は1月1日現在の常用労働者に対する離職者の比率である。他方、入職率は常用労働者に対する入職者(調査対象期間中に事業所が新たに採用した者。他企業からの出向者・出向復帰者を含む)の比率である。

 1991年(平成3)から2020年(令和2)までの20年間の離職率は、パートタイマーを除く一般労働者で10~14%、パートタイマーで22~30%である。雇用動向調査の産業分類が現行方式になった2009年(平成21)以降、2020年までの産業別の平均離職率をみると、「宿泊業、飲食サービス業」でもっとも高く(29.3%)、逆に離職率が低い産業は「電気・ガス・熱供給・水道業」、「複合サービス事業」(ともに8.7%)、「鉱業採石業砂利採取業」(9.6%)、「金融業、保険業」(9.7%)などである。

 厚生労働省が雇用保険の加入データをもとに算出した新卒社員の3年以内の離職率は、2000年3月卒業者では中学卒73.0%、高校卒50.3%、大学卒36.5%であったが(いわゆる「七五三現象」)、2018年3月卒業者では、それぞれ55.0%、36.9%、31.2%に低下した。従業員数規模が小さい事業所ほど新卒社員の3年以内の離職率が高く、5~29人規模では高校卒52.8%、大学卒49.4%に対し、1000人以上規模ではそれぞれ25.6%、24.7%である。これは賃金休暇福利厚生などの労働条件や、教育訓練体制の違いなどが影響していると考えられる。

 大学卒(2018年3月卒業者)の新入社員について3年以内の離職率を産業別にみると、「宿泊業、飲食サービス業」がもっとも高く(51.5%)、これに「生活関連サービス業、娯楽業」(46.5%)、「教育、学習支援業」(45.6%)、「医療、福祉」(38.6%)が続いている。他方、離職率が低い業種は「電気・ガス・熱供給・水道業」(11.1%)、および「鉱業、採石業、砂利採取業」(11.5%)である。

 前記の雇用動向調査をもとに入職率と離職率を比較すると、1990年代後半からの10年間は長期不況の影響で離職率が入職率を上回っていたが、その後、両者はほぼ同率になり、2013年以降は入職率が離職率を上回っている。2020年になると、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)のパンデミック(世界的大流行)による不況の影響で入職率は低下した。ただし、製造業では1990年代以降、ほぼ一貫して離職率が入職率を上回っている。これは生産拠点の海外移転や工場の統廃合、産業用ロボットの導入による省力化が影響していると考えられる。

[伍賀一道 2022年8月18日]

『〔WEB〕厚生労働省『新規学卒者の離職状況』 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html(2022年7月閲覧)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

人事労務用語辞典 「離職率」の解説

離職率

雇用労働者の離職割合を示す数字。一定期間内に雇用関係が終了した労働者(離職者)の数を在籍労働者の数で割ったもので、厚生労働省では労働流動化を把握するための指標としています。
(2004/11/22掲載)

出典 『日本の人事部』人事労務用語辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の離職率の言及

【労働移動】より

…しかし,同一事業所内での職場の転換を意味する配転については資料が得られないので,配転を除く他の4項目に伴う労働移動について述べる。入職者数,離職者数を在籍労働者数で割ったものをそれぞれ入職率,離職率といい,両者の差が雇用の増減率に当たるわけだが,その差は入職率や離職率に比べて著しく小さく,1%前後の雇用変動は実にその10~30倍もの労働移動を伴っている。また,高度成長期と低成長期を比べると,入職率の高い高度成長期には離職率もまた高い。…

※「離職率」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android