難波土産(読み)ナニワミヤゲ

デジタル大辞泉 「難波土産」の意味・読み・例文・類語

なにわみやげ〔なにはみやげ〕【難波土産】

浄瑠璃注釈書。5巻。三木貞成著。元文3年(1738)刊。義太夫節9曲に注釈・批評を加えたもの。穂積以貫の筆とされる近松門左衛門の聞き書き「虚実皮膜論きょじつひにくろん」を収める。

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精選版 日本国語大辞典 「難波土産」の意味・読み・例文・類語

なにわみやげ なにはみやげ【難波土産】

浄瑠璃注釈書。五巻五冊。三木平右衛門貞成著。元文三年(一七三八)刊。近松門左衛門以後、享保期(一七一六‐三六)までの浄瑠璃の代表作九編をとりあげ、外題解説、本文中の辞句の注釈、作品の総評を加えたもの。浄瑠璃の注釈書として初めてのものであると同時に、穂積以貫の筆と思われる発端の部分には近松門左衛門からの聞書きを伝えており、近松の作劇術・芸術観などを知る上でも貴重な資料である。

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改訂新版 世界大百科事典 「難波土産」の意味・わかりやすい解説

難波土産 (なにわみやげ)

浄瑠璃の語句に関する最初の評釈書。著者は穂積以貫とも,備前岡山の三木平右衛門ともいう。1738年(元文3)1月刊。5巻。《国性爺合戦(こくせんやかつせん)》《蘆屋道満大内鑑あしやどうまんおおうちかがみ)》など9編の浄瑠璃の語釈を記し,必要に応じて文句に対する批評を述べたもの。しかし,本書の価値は発端の部分に収められた近松門左衛門聞書にある。〈芸といふものは実と虚(うそ)との皮膜(ひにく)の間にあるもの也。……虚にして虚にあらず,実にして実にあらず,この間に慰が有たもの也〉という〈虚実皮膜論〉で名高いこの聞書は,魂のない人形に魂を吹き込むには,文句に情をこめることが大切で,個々の人物にふさわしい言葉を用い,人物の実情・底意を表すためのデフォルマシヨンを行い,また,浄瑠璃の眼目である愁いの表現には,説明的な描写を排して,〈芸のりくぎ義理につまりてあはれ〉,つまり,劇の展開に内的な必然性を持たせるべきだと説いている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「難波土産」の意味・わかりやすい解説

難波土産
なにわみやげ

江戸時代中期の浄瑠璃評釈書。5巻5冊。三木平右衛門貞成 (蘭皐) 著。元文3 (1738) 年刊。角書 (つのがき) は「浄瑠璃文句評註」。『御所桜堀川夜討』『お初天神記』『安倍宗任松浦きぬがさ』『北条時頼記』『大内裏大友真鳥』『国性爺合戦』『苅萱桑門筑紫 (かるかやどうしんつくしのいえづと) 』『芦屋道満大内鑑』『大塔宮曦鎧 (おおとうのみやあさひのよろい) 』の9編の評注で,名題の解説,本文中の辞句の説明と評,総評などを掲載。巻頭に「発端」があり,穂積以貫によるとされる近松門左衛門の聞き書きを所収,そのなかの虚実皮膜論 (きょじつひにくろん) は,近松の芸術観を知るうえで貴重なもの。

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世界大百科事典(旧版)内の難波土産の言及

【近松門左衛門】より

…そしてそれは〈正根なき木偶(にんぎよう)〉に〈情(じよう)〉をもたせるような文句を発明するということでもあった。これら近松の芸論に類するものは浄瑠璃評釈書《難波土産》(1738)によって知られるが,そこには有名な〈虚実皮膜(ひにく)の論〉なども書きとめられている。 近松は作者となったが,それは武士の家に出て,賤視されていた芝居者の世界に身を投じることによってであった。…

※「難波土産」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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