雲林院(うんりんいん 能)(読み)うんりんいん

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

雲林院(うんりんいん 能)
うんりんいん

能の曲目。四番目物、または三番目物にも扱う。観世宝生(ほうしょう)、金剛喜多の四流現行曲。世阿弥(ぜあみ)による古作の改作であるが、現行の曲は世阿弥以後の改作。雲林院を訪れた『伊勢(いせ)物語』マニア(ワキ)の前に老人(前シテ)が現れ、桜に関する歌問答のすえ、在原業平(ありわらのなりひら)であることを暗示して消える前段業平亡霊(後シテ)が殿上人(てんじょうびと)の姿で登場し、二条の后(きさき)との恋を物語り、美しい叙情を舞う後段が現行の形である。世阿弥自筆本が残されているが、後半に二条の后と、その兄の藤原基経(もとつね)が鬼の姿で現れる全然違った内容で、中世に流行した『伊勢物語』に関する口伝の立体化という色彩がいっそう強い。世阿弥本による復活上演は、1982年(昭和57)8世観世銕之丞(てつのじょう)ほかの手で実現した。

増田正造

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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