零細企業(読み)れいさいきぎょう

精選版 日本国語大辞典 「零細企業」の意味・読み・例文・類語

れいさい‐きぎょう ‥キゲフ【零細企業】

〘名〙 経営規模の非常に小さい企業。
※現代日本技術史概説(1956)〈星野芳郎〉六「桑名の零細企業の生産技術は」

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デジタル大辞泉 「零細企業」の意味・読み・例文・類語

れいさい‐きぎょう〔‐キゲフ〕【零細企業】

わずかな資本設備で経営する、ごく規模の小さい企業。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「零細企業」の意味・わかりやすい解説

零細企業
れいさいきぎょう

中小企業なかでとくに小規模なものをさす用語で、各産業分野に広く存在する。産業ごとに条件が異なるため、具体的にいかなる規模以下の企業をさすかはかならずしも明確ではないが、中小企業基本法によれば、小規模企業の定義は、製造業では従業員20人以下、商業・サービス業では5人以下となっている。自家労働と雇用労働の比率に注目して、自家労働経営が圧倒的に多い従業者4人以下を「零細=勤労業者」、自家労働の比重が35%前後を占める5~9人規模を「小=勤労業者と資本家的企業の中間的存在」と規定し、両者をあわせて小零細企業とよぶ場合もある。

 産業別では、製造業(業種としては、出版、印刷、金属製品、一般機械、衣服、雑貨など)、不動産業、運輸通信業、卸・小売業に多い。総務省の「経済センサス基礎調査」(平成21年版)によれば、製造業における小規模企業は事業所数で84.4%、従業員数で24.8%を占め、小売業では5人以下の事業所が70.4%、卸売業では57.2%を占めている。

 これら(小)零細企業は、従業者10人以上の企業と比較すると、自家労働と自己資本を中心とする個人経営で、経営と家計とが未分離な生業的色彩が強く、金融機関等からの資本調達力が弱い。このため、資本装備率技術水準も低く、生産性の低い労働集約的経営が多い。経営上の「強さ」(同時に「弱さ」)は、「自家労働力の商品化」(つまり事業主の自己雇用selfemploymentと家族労働の「雇用」)によって、営業収益と事業主を含む家族労働の報酬(労働相当分)が家計と直結していることである。雇用労働力が存在する場合でも、中高年齢者や婦女子ないしは学生アルバイトを含むパートなどの低賃金労働で、労働環境や労働条件も一般に劣悪である。情報収集能力や販売力も弱く、限られた地方市場や特定取引先に依存せざるをえない。

 一方、零細企業の「強さ」の特徴は、需要単位の小さな市場を対象に小回りのきく創造的な経営を行うことである。1990年代なかばごろから、情報通信技術の発達・普及により、自宅や小規模なオフィスでパソコンやインターネットを活用して事業を行うSOHO(ソーホー)(Small Office Home Officeの略)という、新しい形態の零細企業も増加している。政策的には、金融、税制、共済制度、経営指導などの助成政策(商工会議所や商工会の経営指導や、これらの機関を通じて無担保・保証人なしで経営改善資金を融資する「小規模企業経営改善資金」制度や小規模企業共済制度)などの政策がよりきめ細かく展開されることが必要となるだろう。

[殿村晋一・鹿住倫世]

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改訂新版 世界大百科事典 「零細企業」の意味・わかりやすい解説

零細企業 (れいさいきぎょう)

中小企業のうち,とくに小規模なものを指していう。なお,中小企業に零細企業を含めない場合もあるので,とくに零細を含むことをはっきりさせるため,中小零細企業という表現が使われることもある。具体的にいかなる規模以下の企業を指すかは明確でないが,一般には製造業でいって常用従業員数9人以下と考えてよかろう。法律ないし《中小企業白書》の用語に類似概念を表す〈小規模企業〉(常用従業員数が製造業等で6人以上20人以下,商業・サービス業で3人以上5人以下の企業),〈小企業〉(同5人以下,同2人以下の企業)という呼名がある。

 零細企業は,大企業と比較すると,経営と家計とが未分離で個人的かつ生業的色彩が強く,自己資本を主体とし金融機関等からの資本調達力が弱い。したがって資本装備率や技術水準が低いため,生産性で格差が大きい。また家族労働力が中心で,雇用労働力がある場合にも中高年齢者や婦女子が多く,労働環境や労働条件も劣悪である。さらに情報収集能力や販売力でも弱く,限られた地方市場や特定の取引先に依存せざるをえないなどの特徴がある。とくに近代鉱工業の発達した工業都市では,大企業を頂点として中小企業がその下請となり,さらに零細企業がその二次下請(孫請)となる生産構造の階層性が形成される。

 初期投資や資本装備が少ない労働集約的工業や,消費者の需要に直結しているため市場開拓費用が小さな商業・サービス業では零細企業の新規参入が容易であるが,反面,景気変動で休廃業に追い込まれるケースも多く,〈多産多死〉とも評されている。零細企業が存立する理由としては,需要単位の小さな市場を対象に小まわりのきく経営をし,家族労働力を主体として生計維持を目標としていることがあげられる。他方,金融,税制,共済制度,経営指導などの助成政策や分野調整などの保護政策が行われている。たとえば,小規模企業・小企業に対して商工会議所,商工会を通して,無担保・保証人なしで経営改善資金を融資する〈小規模企業経営改善資金〉制度や〈小規模企業共済法〉(小規模企業共済等に関する法律。1965施行)がそれである。しかし今後は産業構造の変動にともない零細企業の存立基盤も変化してくるので,小まわりのきく特徴を生かした創造的な経営が必要である。
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世界大百科事典(旧版)内の零細企業の言及

【中小企業】より

…大企業と区別して中企業と小企業とを一括する用語。小企業に含まれる零細企業については,それを含めることを明確にするため中小零細企業といった表現が使われることがあるし,また場合によっては中小企業から除外して考えることもある。中小企業は,その国々によって名称は違うが,資本主義体制の先進諸国のどの国にも存在し,経済活動のなかで少なからぬ比重を占めている。…

※「零細企業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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