電子ビーム溶接(読み)でんしびーむようせつ(英語表記)electron beam welding

日本大百科全書(ニッポニカ) 「電子ビーム溶接」の意味・わかりやすい解説

電子ビーム溶接
でんしびーむようせつ
electron beam welding

真空中で陰極より放出された電子を高電圧で加速し、被溶接物に衝突させてそのエネルギーで溶接を行う方法。EBWともいう。この溶接は通常高真空中で行うため、大気と反応しやすい金属をも容易に溶接でき、また電子ビームレンズで細く絞ってエネルギーを集中させることができるので、ジルコニウムタングステンモリブデンなどの高融点材料の溶接が可能である。他の溶接法に比べ溶接入熱が小さいので溶接ひずみおよび変形が少なく、また溶接部の幅が狭いので精密溶接が可能なこと、深溶け込み溶接ができるので厚板の高速溶接が可能であるなどの利点がある。欠点としては、設備費が高いこと、通常真空中で溶接するので被溶接物の大きさに制限があること、X線防御に留意する必要があることなどがあげられる。溶接箇所のみを部分的に真空にした電子ビーム溶接機などが開発され、大型構造物の溶接も可能になっている。

桑名 武]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の電子ビーム溶接の言及

【溶接】より

…また比較的薄板用には消耗ノズル式エレクトロスラグ溶接法が開発され,船舶の側板の溶接などに広く利用されている。
[電子ビーム溶接]
 電子ビーム溶接は,10-4トル以下の高真空室中で赤熱した陰極から放出された熱電子を高電圧(数十~数百kV)で加速し,これを電磁レンズで絞り被溶接物に衝突させて,その衝突エネルギーで溶融させて溶接する方法である。幅の狭い溶込みの深い溶融を行うことができるので,厚板の1パスでの溶接が容易である。…

※「電子ビーム溶接」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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