対消滅ともいう.陽電子が物質中でその運動エネルギーを失って,物質内の電子と結合し,γ線を放出して消滅する現象.このとき放出されるγ線は通常2個で,運動量保存のため正反対の方向に放出され,それぞれ
mc 2 = 0.51 MeV
(mは陰陽電子の静止質量,cは真空中の光速度)のエネルギーをもつ(二光子過程).陽電子が電子とポジトロニウムを形成する場合,一部は両者のスピンが平行なオルトポジトロニウムとなり,3個のγ線を放出して消滅する(三光子過程).二光子過程は 10-10 s 程度の時間で起こり,三光子過程は 10-7 s 程度の時間で起こる.電子対消滅では物質がエネルギーにかわる.γ線が原子核の近傍で消滅し,同時に陰陽電子の対が生成される過程は電子対生成とよばれ,このときはエネルギーが物質にかわる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 電子の反粒子は陽電子である。電子は単独では安定で崩壊しないが,陽電子と衝突して消滅し数個の光子に転化する(電子対消滅)。また逆にγ線が物質にあたったとき,あるいは十分のエネルギーをもつ荷電粒子が原子核の周囲で急に曲げられると電子,陽電子の対がつくられる。…
※「電子対消滅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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