頭取(読み)トウドリ

デジタル大辞泉 「頭取」の意味・読み・例文・類語

とう‐どり【頭取】

音頭を取る人。転じて、集団かしら頭領
銀行などの首席取締役。その代表者として業務執行に当たる。
雅楽で、合奏の際の各楽器の首席演奏者。特に、管楽器でいう。音頭おんどう
歌舞伎で、「おきな」「三番叟さんばそう」を上演するとき、小鼓方三人のうち、中央に座る主奏者。
歌舞伎劇場で、楽屋のいっさいの取り締まりをする役。また、その人。古参役者から選ばれ、楽屋入り口の頭取座に詰めた。今は庶務係化している。楽屋頭取
相撲で、力士をまとめ、取り締まる人。

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精選版 日本国語大辞典 「頭取」の意味・読み・例文・類語

とう‐どり【頭取】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 音頭を取る人。音頭取。
    1. (イ) 雅楽の合奏で、各楽器特に、管楽器の首席演奏者。音頭(おんどう)
      1. [初出の実例]「調子一名品玄、奏楽毎調始奏之、畧之時音取也 〈略〉至于終句之法、絃管共頭取一人奏終之」(出典:楽家録(1690)一三)
    2. (ロ) 能楽・歌舞伎で「翁(おきな)」「三番叟」を演奏するとき、小鼓方三人のうちの中央の主奏者。小鼓方の統率者。
      1. [初出の実例]「子へ、忝も、観世の頭取、不相替仰付」(出典:四座役者目録(1646‐53))
  3. 転じて、一般に頭(かしら)だつ人。
    1. (イ) 集団の長である人。首領。頭領。頭目。かしら。
      1. [初出の実例]「信忠も聞召て、其中に頭取(トウトリ)之族を御手討に被成ければ」(出典:三河物語(1626頃)一)
    2. (ロ) 歌舞伎劇場で、奥役の下に楽屋内の庶務の取締りを兼ねる役者。名題下の役者ではあるが、物わかりよく顔の売れた古参の役者が選ばれた。その詰めている所を頭取座という。楽屋頭取。
      1. [初出の実例]「頭取(トウドリ)に断りいひて帰りさまに」(出典:浮世草子・嵐無常物語(1688)上)
    3. (ハ) 相撲で、力士を統轄して興行に参加する者。年寄
      1. [初出の実例]「頭取は、往古禁廷にて、相撲番行はせ給ふとき、相撲長と称するもの是なり」(出典:古今相撲大全(1763)下本)
    4. (ニ) 銀行・会社などで、取締役の首席で、その代表者となって業務執行の任に当たる者。
      1. [初出の実例]「会社の頭取が其会社の事を知らぬがある」(出典:大新ぱん浮世のあなさがし(1896))
    5. (ホ) 議長
      1. [初出の実例]「ミニストル方の組は下院に於ては、スピーケル(頭取)の椅子の右側に坐し」(出典:英政如何(1868)五)

あたま‐とり【頭取】

  1. 〘 名詞 〙 売買その他で、なかに立った者が代金賃金一部を取ること。上前取(うわまえとり)

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改訂新版 世界大百科事典 「頭取」の意味・わかりやすい解説

頭取 (とうどり)

〈頭取〉の語は,雅楽の音頭(おんどう)(管楽器の主席奏者),能楽の頭取(《翁》の小鼓方の統率者)から転じて頭(かしら)に立つ人の意に用いられる。相撲で力士を統轄し興行に参加する者や,銀行,会社の代表取締役のこともいう。歌舞伎では劇場の楽屋内の職掌の一つ。一番太鼓のころに出勤し,楽屋入口に近い頭取座,着到板の前に控え,病気休演や舞台事故の処置,無用な者の楽屋立入りの監視,仕切場からの化粧料,日払い,焚捨の配分,終演時に観客に対し〈切口上〉を述べるまで,一切の楽屋進行や取締をする。寛永期(1624-44)に猿若勘三郎が門弟の中から古老の役者を座元の名代として置いたのが始まり。初めは権威もあったが,後年,立者(たてもの)の専属と化してからは,幕内の単なる事務担当となった。文楽の頭取も,歌舞伎の頭取と似た役割をする。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「頭取」の意味・わかりやすい解説

頭取
とうどり

雅楽、能楽、歌舞伎(かぶき)の演奏に際し主奏者となる人、あるいは音頭(おんど)をとる人、音頭取をいう。転じて、江戸時代に至っては一般に頭(かしら)だつ人をいう。たとえば、火消し人足や鳶(とび)の者などの集団の長である人、首領、頭目をさす。このほかに、とくに楽屋頭取や相撲(すもう)の年寄をいう場合もある。前者は、歌舞伎劇場で楽屋いっさいの総取締り役をする名題(なだい)下の役者の呼称で、楽屋2階への階段の反対側に設けられた一段高い所にあった「頭取座」に控え、大切りには口上を述べるなど、中心的な働きをし、物わかりよく、顔の売れた古参の役者がこれを務めた。後者は、相撲興行にあたって、力士を統轄する者をいう。現在では、銀行や会社、組合などの取締役の首席で、その代表者となって業務執行の任にあたる者をいう。

[棚橋正博]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「頭取」の意味・わかりやすい解説

頭取
とうどり

(1) 歌舞伎劇場の楽屋庶務を担当する役。昔は劇界の故実を心得た古老の俳優がつとめ,楽屋入口近くの頭取部屋にいて事務をとった。おもな仕事としては,毎日の支払い経費の配分,代役の選定,諸掲示,紛争の処理,終演時に舞台へ出て「今日はこれぎり」という切口上 (きりこうじょう) を述べることなどであった。現在は名称だけ残り,舞台事務所に勤めて雑務をする係をさす場合がある。 (2) 雅楽では音頭のこと。 (3) 能では翁舞の小鼓のリーダーのこと。 (4) 銀行の長。

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