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原子乾板,霧箱,泡箱などに荷電粒子が入射したとき,粒子の電離作用によって粒子の通った場所にできる可視の進路の跡。飛跡は荷電粒子の足跡ともいえ,粒子の存在の検出はもとより,その識別などに手がかりを与える。泡箱の場合を例にとれば,外部磁場を泡箱にかけたときの飛跡の曲り方から電荷の正負が,また曲率より粒子の運動量が得られる。さらに単位長内の泡の数は粒子が単位長内で失うエネルギーと関連し,おおよそ粒子の速度vと光速cの比v/cの2乗に反比例することが知られているので,ある運動量領域では泡の密度より粒子の識別も可能となる。また,マルチワイヤ・プロポーショナル・チェンバーなど比例計数管の原理を応用した多数の電極から成り立つ検出器では,荷電粒子により電離された電子を検出することにより,電気信号で粒子の通過位置を決めることができる。この場合の飛跡は可視ではないが,信号をコンピューターで処理してグラフィックディスプレーなどで可視化することもできる。
執筆者:山本 祐靖
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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