中国で「一国二制度」により「高度の自治」が認められた「香港特別行政区」のトップ。任期5年で1回に限り再任可能。行政長官選挙は一般市民に投票権はなく、各業界団体の代表ら親中派がほぼ独占する選挙委員会(定数1500)の委員だけが投票できる。昨年5月の選挙制度変更で、中国の意向が一層反映される仕組みとなった。立候補には選挙委員188人以上による推薦が必要。「愛国者」であるかどうかなどを基準に立候補資格の有無を「資格審査委員会」が事前審査する制度も導入された。(香港共同)
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中華人民共和国香港特別行政区の首長。1997年7月1日、香港がイギリスから中国に返還された際に、植民地時代の香港総督の役職が廃止されたかわりに設けられたポストである。香港の各業界団体の代表で構成する選挙委員会による間接投票で選出される。任期は5年。一回だけの再選が認められる。選挙委員は中国政府が任命しており、中国政府に近い候補者しか当選できない構図であると指摘されている。
1期目の選挙委員は400人で、初代長官に董建華(とうけんか)(1937― )が選ばれた。憲法に相当する香港基本法では、香港行政長官は「最終的には広汎性(こうはんせい)のある指名委員会の民主的手続きによる指名ののち、普通選挙で選出する」と明記している。普通選挙を求める香港民衆の高まりを受け、中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)常務委員会は2014年8月、18歳以上の香港市民1人1票による「普通選挙」を2017年選挙から導入する方針を決定。しかし、各業界代表で構成する指名委員会が候補者を事前に選別し、民主派の立候補は事実上、不可能な仕組みとなる普通選挙法案が提出された。反発した民主派や学生は2014年9~12月、街頭を占拠する抗議行動「雨傘運動」を展開した。普通選挙法案は2015年、香港立法会(議会)で民主派議員らの反対により、重要議案採択に必要な3分の2の賛成が得られず否決され、2017年は従来通りの間接投票で4代目長官の林鄭月娥(りんていげつが/キャリーラム)(1957― )が選ばれた。
しかし民主派議員の排除などでその後ほぼ親中派一色となった香港立法会は2021年5月、全人代常務委員会の3月の決定に沿って選挙制度見直しに関する条例案を可決。立候補の可否を事前に決める「資格審査委員会」を設置し、「香港への忠誠」などの基準を満たす「愛国者」の候補者だけを認めるとした。香港行政長官を選ぶ選挙委員の数も親中派を増やす目的で1200から1500に拡大された。
[矢板明夫 2021年7月16日]
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