普通、高分子と短くよばれているが、分子量の非常に大きい化合物の総称である。天然に存在する天然高分子化合物と人工的につくられる合成高分子化合物とがある。前者にはセルロース(繊維素)、ゴム、タンパク質(羊毛、絹)などがあり、後者にはポリエチレンから始まって非常に多種類のものがつくられている。いずれもその分子量が数万~数百万もあり、この分子量の大きいことが、高分子化合物が構造材料として機械的強度を示す原因である。一般に分子量は大きくなるほど強度が大きくなる。しかし、あまり強度が大になると、成形加工がむずかしくなったり、合成繊維では肌ざわりがごわごわして悪くなるので、用途に応じた適当な高分子量にする必要がある。
天然ゴムやセルロースなどの天然物は生体内で合成されるので一定の高分子量物質であり、イソプレンやグルコースから構成されているが、タンパク質はすこしようすが異なっている。すなわち、生体高分子という生命現象に直接関連する核酸(遺伝情報の伝達と保存)と酵素タンパク質(生体内化学反応を調節する触媒)を含めて、組成が一様の構成成分から生成されるのではなく、数十種類のアミノ酸がその物質によって決まった一定の配列で、規則正しく結合された連鎖から成り立っている。これは、生体内でタンパク質が機能を発揮するための必要な条件であり、一部にでも配列に欠陥があると生体に問題を生じる。一方、工業的に多量に生産され、人類の生活に寄与している高分子化合物は合成のものであり、その原料は石油であり有機化合物である。
[垣内 弘]
天然高分子のうちセルロースやゴムなどと、合成高分子のすべては小さい化学的な集団の単位の繰り返しによってできている。この繰り返しの単位は単量体(モノマー)とよばれ、この単量体が一定の法則に従って整数個結合して高分子をつくっている。このときできあがった高分子を重合体(ポリマー)といい、線状高分子と、高分子中に単量体の結合が三次元の立体的な網目構造をもった網目状高分子(三次元高分子)とがある。
高分子化合物は分子が巨大なため気体として存在せず、固体または加熱によっての液体でだけ存在する。また加熱するとゴム状弾性体となるものもある。線状高分子はある種の溶媒に溶けると粘(ねば)い溶液となる。網目状高分子は膨潤するだけで溶けない。
[垣内 弘]
『小竹無二雄監修『大有機化学19~21 天然高分子化合物1~3』(1965、1967・朝倉書店)』▽『小竹無二雄監修『大有機化学22~23 合成高分子化合物1~2』(1966・朝倉書店)』▽『垣内弘編著『新基礎高分子化学』(1967・昭晃堂)』▽『牧広監修『高分子の本質 基礎化学編』(1971・地人書館)』▽『吉弘芳郎監修『高分子化合物の見方・考え方』(1974・オーム社)』▽『村橋俊介ほか編著『高分子化学』第4版(1993・共立出版)』▽『日本化学会編『実験で学ぶ化学の世界3 有機・高分子化合物の化学』(1996・丸善)』▽『高分子学会編・刊『日本の高分子科学技術史』(1998)』▽『横田健二著『高分子を学ぼう――高分子材料入門』(1999・化学同人)』▽『栗原福次著『高分子材料大百科』(1999・日刊工業新聞社)』▽『妹尾学ほか著『基礎高分子科学』(2000・共立出版)』▽『吉川弘之ほか編集委員、高原淳著『岩波講座現代工学の基礎 高分子材料』(2000・岩波書店)』▽『吉田泰彦ほか著『高分子材料化学』(2001・三共出版)』▽『遠藤剛・三田文雄著『高分子合成化学』(2001・化学同人)』▽『大沢善次郎・成沢郁夫監修『高分子の寿命予測と長寿命化技術』(2002・エヌ・ティー・エス)』▽『高分子学会編『高分子材料の安全性』(2002・エヌ・ティー・エス)』▽『尾崎邦宏監修、松浦一雄著『図解 高分子材料最前線』(2002・工業調査会)』▽『日本化学会編『先端化学シリーズ1 有機金属・キラル・触媒・高分子』(2003・丸善)』▽『田中誠ほか著『基礎高分子工業化学』新版(2003・朝倉書店)』
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