黄体(読み)オウタイ

デジタル大辞泉 「黄体」の意味・読み・例文・類語

おう‐たい〔ワウ‐〕【黄体】

脊椎動物卵巣で、排卵後の卵胞から生じる黄色組織黄体ホルモンを分泌し、発情周期を調整する。

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精選版 日本国語大辞典 「黄体」の意味・読み・例文・類語

おう‐たいワウ‥【黄体】

  1. 〘 名詞 〙 脊椎動物の卵巣で、卵を排出した濾胞からできるもの。濾胞の殻が収縮し、壁の細胞が肥大、変質したもので、黄体ホルモンを分泌する。〔医語類聚(1872)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「黄体」の意味・わかりやすい解説

黄体
おうたい

脊椎(せきつい)動物の卵巣の構成要素の一つ。卵は濾胞(ろほう)(卵胞)の中に含まれていて、排卵のあとの濾胞は緩んでひだが寄り、血液をためているが、やがて濾胞の細胞が変化して厚い層をなすようになる。こうしてできた組織を黄体という。哺乳(ほにゅう)類では、黄体の細胞は主として濾胞上皮(顆粒膜(かりゅうまく))の細胞からできるが、内莢膜(ないきょうまく)の細胞も黄体細胞になることがある。黄体形成に際して細胞の増殖はほとんどなく、個々の細胞が大きくなる。顆粒膜からできる黄体細胞には、明るく丸い核と赤色の酸性色素エオシンによく染まる豊かな細胞質があり、細胞質に、黄体の名の由来であるルテインとよばれる黄色の脂質顆粒を含む。一方の内莢膜からできる黄体細胞は顆粒膜黄体細胞よりも小さい。電子顕微鏡で見ると、両黄体細胞とも滑面小胞体が著しく発達し、層板状ではなく管状のクリスタをもつ大形のミトコンドリアの存在が特徴的である。妊娠成立すると、個々の細胞が特別に肥大するので、黄体は全体として大きくなり(妊娠黄体)、妊娠維持に必要なホルモンのプロゲステロンを大量に分泌する。妊娠の末期、または妊娠がおこらない場合には、次の排卵までに黄体は急速に退化し始める。黄体細胞は萎縮(いしゅく)し、脂肪変性をおこして消失する。ヒトでは、繊維素が黄体細胞のあとを埋めるので、肉眼で見ると白い組織(白体)となる。白体はやがて完全に消失する。さまざまな発達段階にある濾胞が排卵しないで黄体化することもあり、これを閉鎖黄体という。

[川島誠一郎]

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改訂新版 世界大百科事典 「黄体」の意味・わかりやすい解説

黄体 (おうたい)
corpus luteum

脊椎動物の卵巣の中にあり,卵胞から排卵が起こることによってできる組織塊。成熟卵胞が破裂して排卵が起こると,卵胞の中へ血液が充満し赤体となる。この血液はまもなく吸収され,卵胞を囲んでいた内卵胞膜細胞theca interna cellと卵胞内に充満していた顆粒膜細胞granulosa cellが増殖して黄色みを帯びた黄体細胞となり,黄体を形成する。前者に由来する細胞を卵胞膜黄体細胞theca lutein cell,後者に由来する細胞を顆粒層黄体細胞granulosa lutein cellと呼ぶ。両者ともステロイド分泌細胞の特色をもつ。すなわち滑面小胞体,脂肪滴に富み,ミトコンドリアのクリスタが小管状で,黄体ホルモン(プロゲステロンprogesteronなど)を分泌する。ヒトでは,黄体は約2週間で急速に退化をはじめるが,もし妊娠した場合は4ヵ月ころまで発達を続け直径4cmにもなる。その後退化しはじめるが出産まで活動する。前者を月経黄体,後者を妊娠黄体とよぶ。黄体が退化萎縮すると白体corpus albicansと呼ばれる瘢痕(はんこん)組織となり,6週間で顕微鏡でしか見えなくなる。妊娠していないときも機能を維持しつづける黄体を永久黄体といい,乳牛などの家畜にみられる。
月経
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百科事典マイペディア 「黄体」の意味・わかりやすい解説

黄体【おうたい】

脊椎動物の卵巣で,排卵後の濾胞(ろほう)壁の細胞が変化して形成する組織塊。哺乳(ほにゅう)類では主として濾胞上皮細胞が変質肥大し,脂質や黄色色素ルテインを含む黄体細胞になり,次第に内腔をみたして黄体となる。妊娠すれば黄体は特に大きくなり健全な状態で維持される期間も長い(妊娠黄体)。妊娠しなければまもなく退化する。ヒトでは排卵後16日ごろにはその機能を失い,その結果月経出血をみる(月経黄体)。いずれにせよ,その後黄体細胞は萎縮(いしゅく)し,一種の結合繊維となる。これを白体という。黄体はふつう黄体ホルモンを分泌する。
→関連項目卵巣卵胞

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「黄体」の意味・わかりやすい解説

黄体
おうたい
corpus luteum

排卵のあとで卵胞が変化したもの。黄色の顆粒状の色素を含む細胞で満たされており,黄体ホルモン (プロジェステロン) を分泌して,妊娠の成立や維持に役立つ。ヒトでは,ほぼ1ヵ月に1回黄体が形成され,妊娠が成立しなければ 14±2日間存続してから退行萎縮して,白体となる。妊娠すると約6週間存続する (→月経 ) 。

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栄養・生化学辞典 「黄体」の解説

黄体

 ルテインともいう.排卵のあと下垂体前葉の黄体形成ホルモンの作用により卵胞が変化して生成する小体.妊娠すると妊娠黄体として黄体ホルモン(プロゲステロンと20αヒドロキシプロゲステロン)を分泌する.

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世界大百科事典(旧版)内の黄体の言及

【月経】より

…性周期は,間脳・脳下垂体‐卵巣系における神経系と内分泌系との間の,一種の生体自動調節機構によってもたらされるもので,脳の視床下部脳下垂体前葉と卵巣とが相互に作用しあい,それぞれからのホルモン分泌が巧妙に調節されて起こる。
[月経周期]
 間脳・視床下部の支配のもとに,脳下垂体前葉から,月経周期に応じて,2種類の性腺(または生殖腺)刺激ホルモン(ゴナドトロピン),すなわち卵胞(または濾胞)刺激ホルモンfollicle‐stimulating hormone(FSHと略記)と黄体形成ホルモンluteinizing hormone(LHと略記)が規則正しく周期的に血中に分泌される。卵胞刺激ホルモンは卵胞を刺激して卵胞を成熟させる。…

【性器】より

…小柱の平滑筋が収縮して海綿体が収縮し,静脈から血液が流出して勃起がおさまる(図4)。
【女性の性器】

[卵巣と卵胞の成熟]
 卵巣は,卵子を作る器官であるとともに,女性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)を分泌する内分泌腺でもある。骨盤腔の外側壁の近くにある1対の平たい楕円形の器官で,中心部の髄質と表層部の皮質に区別される。…

【排卵】より

…まず,卵巣に20万~30万個ある原始卵胞(原始濾胞)の中の数個が,月経後脳下垂体前葉から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)の刺激を受けて発育卵胞となり,そのうちの1個だけが成熟卵胞(成熟濾胞。グラーフ卵胞(グラーフ濾胞))に発達した段階で,脳下垂体前葉から分泌される大量のLH(黄体形成ホルモン)とFSHの作用により,成熟卵胞の卵巣表面に突出した部分の卵胞膜がしだいに薄くなり,ついにここに破裂孔と呼ばれる穴があき,ここから顆粒(かりゆう)膜細胞群によって囲まれた卵(卵子)が腹腔の中に卵胞液とともに排出される。これが排卵である。…

【卵巣】より

…濾胞の成熟,排卵に伴ってホルモンの分泌パターンが変化し,それに伴って,生殖器,生殖器以外の体組織,行動などが変化し,交尾やそれに伴う受精,あるいは妊娠が起こりやすくなるように準備を整える。【舘 鄰】
[ヒトの卵巣]
 ヒトの卵巣は,男性の精巣にあたる女性の生殖器であり,卵細胞をたくわえ,成熟させる器官であると同時に,卵胞ホルモンや黄体ホルモンなどの性ホルモンを分泌する内分泌腺である。ヒトでは骨盤腔の外側壁に接して卵管の直下に左右1対ある。…

※「黄体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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