黄道十二宮(読み)コウドウジュウニキュウ

デジタル大辞泉 「黄道十二宮」の意味・読み・例文・類語

こうどう‐じゅうにきゅう〔クワウダウジフニキユウ〕【黄道十二宮】

黄道帯を、春分点を起点として30度ずつ12等分してつけた名称白羊金牛双子そうし巨蟹きょかい獅子しし処女天秤てんびん天蝎てんかつ人馬磨羯まかつ宝瓶ほうへい双魚そうぎょの12宮。太陽は1年間これらの宮を順に移動するので、古代オリエントから占星術に使われた。現在は歳差により春分点が双魚宮に移ったので、十二宮はほぼ一つずつ前にずれている。→黄道十二星座

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精選版 日本国語大辞典 「黄道十二宮」の意味・読み・例文・類語

こうどう‐じゅうにきゅう クヮウダウジフニキュウ【黄道十二宮】

春分点を基準にして、黄道帯を三〇度ずつ十二等分し、付近の星座の名をあてはめたもの。白羊宮、金牛宮、双子宮、巨蟹(きょかい)宮、獅子宮処女宮、天秤(てんびん)宮、天蝎(てんかつ)宮、人馬宮、磨羯(まかつ)宮、宝瓶(ほうへい)宮、双魚宮の総称。古代オリエントに始まり、中世ヨーロッパで流行した。現在は歳差のため、一宮ずつ星座名とずれている。十二宮。獣帯

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「黄道十二宮」の意味・わかりやすい解説

黄道十二宮
こうどうじゅうにきゅう

黄道に沿った天域を12分割して十二宮とよぶ。春分点に始まり、黄経0~30度を白羊宮、30~60度を金牛宮、以下30度分割で双子宮(そうしきゅう)(双児宮)、巨蟹宮(きょかいきゅう)、獅子宮(ししきゅう)、処女宮、天秤宮(てんびんきゅう)、天蝎宮(てんかつきゅう)、人馬宮、磨羯宮(まかつきゅう)、宝瓶宮(ほうへいきゅう)、双魚宮とよんだ。これは黄道上の12星座である、おひつじ、おうし、ふたご、かに、しし、おとめ、てんびん、さそり、いて、やぎ、みずがめ、うおの各座に対応するもので、とくに古代オリエントに始まり、中世ヨーロッパで流行した、出生時の天界のありさまで人間の運命を占うホロスコープ占星術において、太陽、月、五惑星の位置を示すのに使われた。天球の歳差運動により春分点が現在ではうお座に移っているが、十二宮ではこの天域の名称は白羊宮で、現実の星座とは一つずつ食い違った命名になっている。

 仏教では密教体系に十二宮が移入され、『大日経疏(だいにちきょうしょ)』では十二宮神を西方月天の眷属(けんぞく)とし、胎蔵界曼荼羅(まんだら)図の外縁部にその姿が描かれていることがあり、その名称は、獅子宮、女(にょ)宮、秤(しょう)宮、蝎(かつ)宮、弓宮、磨羯宮、缾(へい)宮、魚宮、羊宮、牛宮、婬(いん)宮、蟹(かい)宮の順で、図形も、やぎ、ふたごなどはギリシアの星座とはまったく違った姿になっている。

[石田五郎・藤井 旭]

『沼沢茂美写真、NHK取材班編『大星夜ウオッチング』(1991・日本放送出版協会)』『ジャン・カレルズ著、阿部秀典訳『占星術大全』(1996・青土社)』『ルドルフ・シュタイナー著、西川隆範訳『星と人間――精神科学と天体』(2001・風濤社)』『矢島文夫著『占星術の起源』(ちくま学芸文庫)』


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改訂新版 世界大百科事典 「黄道十二宮」の意味・わかりやすい解説

黄道十二宮 (こうどうじゅうにきゅう)
zodiac

黄道に沿って各宮30度の広がりをもった弧よりなる12宮をとり,ギリシアのヒッパルコスの解釈によれば,黄道の南北に一宮の弧の広がりが30度を超えない幅をもった帯状の部分を黄道十二宮という。前2100年ころの楔形文字板に黄道十二宮の痕跡があり,はじめはバビロニア天文学において使用され,前800年以後ギリシアに伝えられたとされている。宮のほとんどが動物名で表され,その名称がそのまま星座名にもなったが,黄道帯はギリシア語ではもともと動物を意味し,したがって獣帯とも呼ばれた。この黄道帯の12宮は,太陽,月,惑星の位置を示すために用いられたが,たとえば太陽はひと月に一宮ずつ移動する。この十二宮は白羊宮(おひつじ座),金牛宮(おうし座),双子宮(ふたご座),巨蟹(きよかい)宮(かに座),獅子宮(しし座),処女宮(おとめ座),天秤宮(てんびん座),天蝎(てんかつ)宮(さそり座),人馬宮(いて座),磨羯(まかつ)宮(やぎ座),宝瓶(ほうへい)宮(みずがめ座),双魚宮(うお座)よりなる。はじめて黄道十二宮が用いられた時代には,春分点はおひつじ座にあって,白羊宮の原点と呼ばれたが,現在では歳差のために春分点が移動し,うお座にきている。西洋占星術はこの十二宮に準拠して作られたものである。

 前30年のものとされるハトホル神殿の円形天井には黄道十二宮が彫刻されており(ルーブル美術館蔵),メソポタミアから伝えられたと考えられている。インドへはキリスト紀元前後にギリシアから伝えられた。中国では周天を二十八宿に不等間隔に分割するものとは別に,周天を12等分した十二次が戦国時代から使用され,また十二支にあてた動物によって年次を表す方法も現れたが,仏教経典の翻訳とともに黄道十二宮が伝えられた。最も初期のものは隋代の《大乗大方等日蔵経》(6世紀後半)に見える十二宮であり,唐代には不空が758年(乾元1)に訳出した《宿曜経》,806年(元和1)の金俱叱の《七曜禳災訣》などに十二宮のいくつかが見える。その後の宋代までの文献にも十二宮が見えるが,黄道十二宮の図も新疆のトゥルファンから出土した唐代の写本,あるいは敦煌千仏洞の宋代初期の壁画に見られる。しかし,二十八宿とともに黄道十二宮を描いた最も完全な彩色壁画は,1974年河北省張家口市宣化地区で発見された遼の張世卿(1116没)の墓の後室の天井に描かれた星図である。剝離した金牛宮を除けば,十二宮は完全に保存されていた。中央の蓮華文様と二十八宿の間に日・月・五惑星のほか,羅・計都と考えられるインド天文学の仮想天体が描かれており,仏教的宇宙と関係があるとされる。
執筆者:

天文学上の星座と,占星術上の十二宮はまったく異なった観念なので混同しないように気をつけなければいけない。この12という数は,1,2,3,4の最小公倍数であり各宮はこの四元数(テトラクテュス)の組合せが表現する象徴的意味をもっており,それを表にすると表1のようになる。

 一は全宇宙の一元性,万物の斉同性を,二は二極の対立と拮抗を,またこの系列における1は男性,積極性,2は女性,消極性を表す。三は事物の時間的推移であり,それぞれ始まり(1)と極まり(2)と変化(3)を,四は火(1),地(2),風(3),水(4)の四大元素に象徴される存在の位階秩序を象徴する。十二宮の基本的意味はこの数の象徴的意味から割り出されたものである。また十二宮には例えば表2のようにさまざまな事物が割り当てられている。
占星術
執筆者:


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百科事典マイペディア 「黄道十二宮」の意味・わかりやすい解説

黄道十二宮【こうどうじゅうにきゅう】

〈十二宮〉とも。黄道の南北に8°ずつの幅をもつ帯状部分(獣帯zodiac)を考え,春分点を起点として黄道に沿って30°ずつ12等分したもの。古代から太陽,月,惑星の運行を示す座標として使われた。すなわち,白羊(はくよう)宮(おひつじ座),金牛(きんぎゅう)宮(おうし座),双子宮(ふたご座),巨蟹(きょかい)宮(かに座),獅子(しし)宮(しし座),処女宮(おとめ座),天秤(てんびん)宮(てんびん座),天蠍(てんかつ)宮(さそり座),人馬宮(いて座),磨羯(まかつ)宮(やぎ座),宝瓶(ほうへい)宮(みずがめ座),双魚(そうぎょ)宮(うお座)の12星宮(括弧内は対応する星座)をいう。歳差のため現在の春分点はうお座に移った。バビロニアに発して,ギリシア,エジプトに伝わったと想定され,のちインドを介して中国にも見られる。占星術でも用いられ,さまざまな惑星,動・植・鉱物,人体部位,気質などとの照応関係やシンボリズムが論じられる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「黄道十二宮」の意味・わかりやすい解説

黄道十二宮
こうどうじゅうにきゅう
zodiac

古代の天文学では,天球黄道の目印に,その南北それぞれ8°または9°ずつの帯域を定め,これを獣帯と呼び,だいたいその中に含まれる 12の星座を黄道十二宮と呼んだ。太陽は平均して毎月1宮ずつその星座を移っていくことになる。ただし,太陽はへびつかい座も通るが,これは黄道十二宮に入れない。十二宮にはそれぞれ性格が与えられ,この組合せで占星術が行われる。

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とっさの日本語便利帳 「黄道十二宮」の解説

黄道十二宮

→「日常生活で役に立つ!編 暦」の「黄道十二宮と十二星座」

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世界大百科事典(旧版)内の黄道十二宮の言及

【数】より

… 12は宇宙的秩序を表す。占星術の黄道十二宮,東洋では十二支(干支)など,空間と時間,円や輪の動きと関係して回帰や循環も意味する。 13はキリスト教ではとくに災厄の数(13日の金曜日など)とされているが死と再生の象徴でもある。…

【占星術】より

… ホロスコープは四つの要素から成る。(1)惑星(プラネットplanet) 占星術上の惑星とは,黄道十二宮上を恒星天と逆行する星辰を指し,それゆえ太陽と月も惑星のうちに入る。近代ではさらに天王星,海王星,冥王星も数え,小惑星を取り上げる人もいる。…

※「黄道十二宮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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