ネズミなどにかまれたのちに突然発熱し、波状熱を呈する感染症。日本では古くから鼠毒(そどく)とよばれていたもので、1915年(大正4)伝染病研究所の二木謙三(ふたきけんぞう)らによって病原体が分離され、鼠咬症スピロヘータと命名されたが、これはスピリルム・ミヌスSpirillum minusとよばれるグラム陰性のらせん菌で、両端に鞭毛(べんもう)をもち、いわゆるスピロヘータに類似するが、まったく異なるシュードモナス類Pseudomonasに属する細菌である。
病原体を保有するネズミ、ネコ、イタチなどにかまれてから1~3週、あるいはそれ以上の潜伏期を経て突然発熱し、4~5週間繰り返し波状熱を呈する。最初の発熱後に咬傷部が暗赤色に腫脹(しゅちょう)し、リンパ節の腫脹もみられることがある。頭痛や関節痛なども伴うが、関節炎はまれである。治療には抗生物質が用いられ、とくにペニシリンが有効である。イエネズミの保菌率は数%から数十%といわれ、ネズミにかまれたら傷の消毒をすることがたいせつで、医師の指示に従って予防的に抗生物質を用いる。
なお、このほかストレプトバシラス・モニリホルミスStreptobacillus moniliformisとよばれるらせん菌の感染による鼠咬症もあり、ハーバーヒル熱Haverhill feverともよばれる。この場合は、ネズミの咬傷ばかりでなく、汚染物などからの経口感染や研究室感染もあるという。潜伏期は2~7日で、暗赤色の麻疹(ましん)様発疹がみられたり、重篤な場合には非化膿(かのう)性関節炎がおこったり、急性の場合には敗血症や心内膜炎などもみられる点が、スピリルム・ミヌスによる場合と異なる。治療にはペニシリン、ストレプトマイシン、テトラマイシンなどが用いられる。
[柳下徳雄]
鼠毒ともいう。ネズミの咬傷によって感染する感染症。病原菌はスピロヘータのSpirillum minusで,1915年二木謙三らによって発見された。5~28日の潜伏期ののち,咬傷部に発赤,腫張,疼痛を生じ,悪寒戦慄(せんりつ)を伴う発熱,筋肉痛,頭痛などの全身症状に加え,皮膚には紅斑が現れる。またリンパ節も腫張し,圧痛がある。発熱は数日でいったん解熱するが,ふたたび2~4日の間隔で発熱をくりかえす。検査では好中球を主とする白血球の増加がみられ,リンパ節の穿刺(せんし)液からは病原菌を検出することができる。治療はペニシリンなどの抗生物質を用いた化学療法によるが,予後は良好である。なお,ネズミの咬傷による感染症には細菌のStreptobacillus moniliformisによるものもあり,周期熱,リンパ節炎,発疹を伴う。
執筆者:川口 啓明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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