チーフ・オペレーティング・オフィサーchief operating officerの略で、最高執行責任者と訳す。アメリカ型の企業統治組織形態をとる企業における役職名である。事業活動を実際に運営管理するライン部門(販売部門や製造部門など)を統括し、取締役会で決定された戦略を実行する責任を負う。日本でいう「社長」の立場に近い。ただ、日本企業の「社長」は、ライン部門だけでなくスタッフ部門も統括しているため、COOよりも権限は強い。
アメリカ型企業統治組織は、取締役会(ボード)と執行役(オフィサー)の2段階になっている。両方のメンバーとなるのが、社内取締役といわれる。社内取締役には、COOのほかにCEO(最高経営責任者)、CFO(最高財務責任者)が通常就任し、必要によりCTO(最高技術責任者)、CSO(最高戦略責任者)なども加わる。
日本企業は伝統的に会長と社長がおり、会長は名誉職が多く、経営責任を負うのは社長が通常であった。このため、2003年(平成15)4月、大会社にアメリカ型の取締役会をモデルとした委員会等設置会社の導入が認められると、これに移行した企業では、CEOとCOOの役割分担は不明確となり、権限と責任があいまいにされているケースが多くみられるようになった(2006年に委員会設置会社に名称変更し、大会社の規模規制も撤廃)。会社法第362条に規定された代表取締役にはCOOも就任できる。代表権をもつ取締役を複数設けることは会社法でも認められているためである。この面からもCEOとCOOの権限と責任のあり方に課題を残している。
アメリカ企業で始まったCEOの取締役会メンバー(ディレクター)と執行役(オフィサー)の兼務を廃止する動きは、COOの権限と責任を明確にしていくことに役にたつと予測される。CEOは戦略決定と経営監査に専念する。COOは業務執行に対する権限をもち、その執行に専念し、結果に責任をもつからである。
日本企業においてCOOが定着し、有効に機能していくには、もうすこし時間を要すると思われる。
[丹羽哲夫]
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