日本大百科全書(ニッポニカ) 「FS-X」の意味・わかりやすい解説
FS-X
えふえすえっくす
航空自衛隊の次期支援戦闘機Fighter Support Experimentalの略称。FS-XはF-1の後継機をさす略称であり、アメリカのF-16戦闘機を大型化した機体に空対艦ミサイル最大4発搭載可能な日米共同開発機。1995年(平成7)に初飛行し、2000年(平成12)から部隊配備を開始した。配備後の名称はF-2。
航空自衛隊の支援戦闘機F-1が1990年代後半には退役する予定であったため、防衛庁(現、防衛省)は1980年代中ごろ、その後継機の検討を開始した。当初は「国内開発」が有力であったが、当時の日米貿易摩擦などに端を発するアメリカとの政治的問題が絡み、かつ、技術的・財政的にも課題が多く、結果的にアメリカのF-16戦闘機をベースとする「日米共同開発」となった。本機は、空対艦ミサイルを最大4発搭載可能とすることに加え、約1000キロメートルの戦闘行動半径をもつことという要求性能を確保するため、F-16戦闘機を大型化しつつ、軽量化のため、炭素繊維強化複合材による一体構造の主翼を採用している。また、量産戦闘機として世界で初めてアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダーactive phased array radar(目標の方位・高度・距離の測定が同時に行えるステルス性レーダー)を採用するとともに、国産技術によるデジタル式フライ・バイ・ワイヤfly by wire(電気信号による操縦システム制御)方式を飛行制御に採用している。
開発は、防衛庁技術研究本部が三菱重工業を主契約会社、アメリカのロッキード・マーチン社、川崎重工業および富士重工業を協力会社として設計を開始し、1995年10月に初飛行、1996年3月に試作初号機を納入。同年7月、日米両国政府間での支援戦闘機(F-2)システムの生産に関する覚書(生産MOU)の締結を受けて、航空自衛隊は1996年度から調達を開始し、2000年9月に量産初号機が納入され、初度開発が完了した。
F-2が最初に配備されたのは三沢基地(青森県)の第3飛行隊。2000年10月に「臨時F-2飛行隊」が発足し、F-2の受領と訓練を開始し、2001年2月にはF-1からF-2への機種更新を完了した。F-2の調達は2007年度に終了し、2011年9月に最終号機が納入されている。
ちなみに、戦闘機は「グローイング・ファイター」と称せられるように、設計仕様の実飛行確認を含め、武装搭載能力の拡大等を追求しつつ、技術的趨勢(すうせい)や敵対する可能性がある脅威の能力向上に適切に対応するため、能力向上や不断の改修が必要とされるといわれており、F-2も、その能力は向上し続けている。
[永岩俊道 2023年5月18日]