改訂新版 世界大百科事典 「MSH」の意味・わかりやすい解説
MSH (エムエスエッチ)
メラニン細胞刺激ホルモンmelanocyte-stimulating hormoneの略。動物の脳下垂体から,α,βおよびγの3種類のMSHが分離されている。α-MSHは,下等脊椎動物で色素沈着作用をもつホルモンとして早くから知られているホルモンで,13個のアミノ酸からなり,その配列はACTHのN末端1~13に一致する。ただ,ヒトの成人ではα-MSHは存在しない。これまでヒトにおいてメラニン細胞刺激作用をもつホルモンとしてβ-MSH(アミノ酸22個)が提唱されてきたが,最近の検討によれば,この物質は抽出操作中にβ-リポトロピンから生じた人工産物であることが判明した。したがって,ヒトの場合には,メラニン細胞刺激作用をもつホルモンはβ-リポトロピンとACTHである。γ-MSHは,最近ACTHとβ-リポトロピンの共通前駆体の一部を構成するホルモンとして発見されたが,まだそのホルモンとしての役割は明らかにされていない。
執筆者:石橋 みゆき
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報