さび(読み)サビ

デジタル大辞泉 「さび」の意味・読み・例文・類語

さび

日本風歌謡曲、ポップスなどの大衆音楽で、楽曲の聞かせどころをいう。「好きな曲のさび着メロにする」
[補説]語源は不詳。「さびのある声」などと同語源か。音楽業界ではかなり早くから使っていたという。

さび

鮨屋すしやで、わさびのこと。「さびぬき」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「さび」の意味・わかりやすい解説

さび(寂)
さび / 寂

美的理念。閑寂ななかに、奥深いものや豊かなものがおのずと感じられる美しさをいう。単なる「さびしさ」や「古さ」ではなく、さびしく静かなものが、いっそう静まり、古くなったものが、さらに枯れ、そのなかに、かすかで奥深いもの、豊かで広がりのあるもの、あるいはまた華麗なものが現れてくる、そうした深い情趣を含んだ閑寂枯淡の美が「さび」である。老いて枯れたものと、豊かで華麗なものは、相反する要素であるが、それらが一つの世界のなかで互いに引き合い、作用しあってその世界を活性化する。「さび」はそのように活性化されて、動いてやまない心の働きから生ずる、二重構造体の美とも把握しうる。

 中世では仏教思想の影響から、表面的な豊かさより、精神的、内面的な充実のなかに、人生の真実を求めようとする傾向が強まった。芸術においても、奥行のある美しさが追究されるようになったが、藤原俊成(しゅんぜい)の「幽玄」や、兼好(けんこう)の『徒然草(つれづれぐさ)』、世阿弥(ぜあみ)の能、心敬(しんけい)の連歌(れんが)、さらには武野紹鴎(たけのじょうおう)や千利休(せんのりきゅう)の茶も、そうした精神の具現化とみなされ、「さび」の美も、これらを背景に成立してきた。俊成は歌合(うたあわせ)の判詞のなかで「姿さびて」と、「さび」を賛辞として用いているが、これは「さび」を美的なものとして扱った古い例である。心敬は「ひえ」「やせ」「からび」とともに、「さび」を文芸上の最高の境地とし「いはぬ所に心をかけ、ひえ、さびたる方を悟り知」(『ささめごと』)ることが、和歌同様連歌においても必要だと説いた。こうした伝統を踏まえ、従来「さびて」のように動詞として用いられていた語を、「さび」と名詞化し、よりはっきりした形でとらえたのが松尾芭蕉(ばしょう)である。芭蕉俳諧(はいかい)において「さび」は、「しほり」「ほそみ」とともに重視され、以来、それは美的理念として、日本人の一般的な生活感情の領域にまで影響を与え、今日に至っている。芭蕉自身「さび」にはほとんど言及せず、門弟間でも師の「さび」に対する見解は分かれていたが、向井去来(きょらい)の『去来抄』には、「さびは句の色なり、閑寂なる句をいふにあらず」とあり、さらに去来の「花守や白きかしらをつき合せ」の句が、芭蕉によって「さび色よくあらはれ」と賞賛された話が載せられている。素材の閑寂さよりも、一個の詩人の心の働きとして「内に根ざして外にあらはるる」(去来著『答許子問難弁』)ことを重んじたところに、芭蕉の「さび」の本質があったと考えられる。

[堀越善太郎]

『西尾実著『中世的なものとその展開』(1961・岩波書店)』『栗山理一著『俳諧史』(1963・塙書房)』『草薙正夫著『幽玄美の美学』(1973・塙新書)』『秋山虔・神保五弥・佐竹昭広編『日本古典文学史の基礎知識』(1975・有斐閣)』『「さび・しをり・細み」(『潁原退蔵著作集10』所収・1980・中央公論社)』『復本一郎著『さび――俊成より芭蕉への展開』(1983・塙新書)』


さび(錆)
さび

金属表面に沈着した腐食生成物をいう。普通「錆」と書くが、とくに鉄の腐食生成物をいう場合は「銹」と書くことがある。英語のrustは鉄の銹のみを意味している。通常は水分を伴うものをいい、高温酸化の生成物はスケールscaleといって区別する。

[山崎 昶]

さびの成分

鉄の銹(赤銹)は水和酸化物が主体である。さらに、大気中の二酸化炭素や二酸化硫黄(いおう)、食塩分などによって生じた塩基性塩も含まれる。銅の錆は塩基性炭酸銅(青錆または緑青(ろくしょう))が主体である。鉄の銹は通常は2層をなし、比較的強く密着した内層と、緩い結合の外層からできている。しかし成分は大差なく、マグネタイト(四酸化三鉄)、ゲータイトα-FeOOH、およびレピドクロサイトγ-FeOOHが大部分である。亜硫酸ガス汚染地域ではマグネタイトが減じ、かわりに硫酸鉄(Ⅱ)四水和物がみられることが多い。

[山崎 昶]

さび止めの方法

一般にはさび層はマクロ的な割れ目が多いこともあって、腐食に対する抵抗力はあまり大きくない。人工的に酸化被膜をつくり(金属が直接空気や湿気に触れないように)、それ以上のさびの進行を食い止める方法もアルミニウムなどでは成功している(商品名アルマイト)。いわゆる耐候性鋼マンガンクロムなどをごくわずか添加した低合金鋼であるが、大気中における腐食の速度は通常の鉄に比べてはるかに小さい。この原因はまだよく解明されていないが、添加した微量元素のために表面のさびの非結晶化がおこり、被膜の割れ目が減じ保護作用が強化されたものとされている。クロムやニッケルなどを合金としたステンレス鋼は、酸化性の環境下でも不動態化を容易にした一連の合金鋼をさす。用途によりいろいろな成分のものがつくられている。

[山崎 昶]

『井上勝也著『さびの科学』(1979・三省堂)』


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百科事典マイペディア 「さび」の意味・わかりやすい解説

さび

美的興趣をさす言葉で中世の歌論・連歌論にも用いられているが,とくに俳諧用語として一般化した。蕉風俳諧においては〈しをり〉〈ほそみ〉と並称される句の姿の目標である。中世の〈幽玄〉〈ひえ〉〈〉(わび)の美意識を,芭蕉が自らの俳諧にそのまま生かそうとした,芭蕉俳諧の根本精神。去来は〈さび〉を句の色であると説明する。
→関連項目さび(錆/銹)止め丈草

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化学辞典 第2版 「さび」の解説

さび
サビ
rust

金属あるいは合金の腐食生成物のうち,固体のものをいう.鋼のさび層は,比較的緩く付着している外層と,強く密着している内層からなっているが,組成は内層,外層であまり差はなく,その主要結晶性構成分は,γ-FeO(OH)(lepidocrocite),α-FeO(OH)(goethite),およびFe3O4(magnetite)である.とくにSO2で汚染された工業地帯で生成した鋼のさび層は,Fe3O4が少なくなると同時にFeSO4・4H2Oの結晶が主として内層に見られる.一般にさび層は,マクロな割目もあり,腐食に対しての保護性は大きくない.耐候鋼は,Cu,Cr,Pなどの添加元素を含む低合金鋼で,大気中の腐食速度が普通鋼の数分の一のものである.これは,添加元素によりさび層が非晶質化し,保護作用が強化されたものと考えられている.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「さび」の意味・わかりやすい解説

さび

俳諧用語。蕉風の俳諧においてその本質,風趣についていう語。去来は「さびは句の色なり。閑寂なる句をいふにあらず。たとへば,老人の甲冑を帯し戦場に働き,錦繍をかざりて御宴に侍りても老の姿有るが如し。賑やかなる句にも,静かなる句にも有るものなり」といっている。中世以来の幽玄美に,さらに枯寂な色調が加えられたもの。表面的,題材的な情調ではなく,対象をとらえる作者の心的観照,体験が「さび」をもっているのである。だから濃艶な題材を詠んでも「さび」は表われる。去来の「花守や白き頭をつき合はせ」の句について,芭蕉は「さび」色がよく表われたといってほめたという。

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リフォーム用語集 「さび」の解説

サビ

鉄や鉄合金の腐食生成物のうち、水に不溶であるものの事。鉄が酸化して安定な状態へとかえろうとする過程に生じる結果。

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「さび」の解説

さび

すし屋で、「わさび(山葵)」の略。「さび抜き(わさびを入れないこと)」などと用いる。

出典 講談社和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典について 情報

音楽用語ダス 「さび」の解説

サビ [bridge]

冒頭のフレーズとは異なる楽節のことで、A+B+A'のBの部分。

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