イプシロン(読み)いぷしろん(その他表記)Epsilon Launch Vehicle

デジタル大辞泉 「イプシロン」の意味・読み・例文・類語

イプシロン(Ε/ε/epsilon)


〈Ε・ε〉ギリシャ文字の第5字。エプシロン
〈ε〉数学で、零に近い任意の微少量。
イプシロンロケット

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知恵蔵 「イプシロン」の解説

イプシロン

JAXA(宇宙航空研究開発機構)が開発を進める固体燃料の小型ロケットの名称。2007年に次期固体ロケットプロジェクトとして承認され、13年8月には、惑星分光観測衛星SPRINT-Aを載せて、最初の実証機を打ち上げる予定。ラムダロケット、ミューロケットなど国産ロケット技術の継承を象徴するギリシャ文字のEの読みなどにちなみ、イプシロンと命名された。「宇宙への敷居を下げる」をスローガンに、シンプルかつコンパクトなロケットとして、小型衛星を安価・高頻度・タイムリーに開発・運用することを目指す。
これまでJAXAはその前身である、ISAS(宇宙科学研究所)が運用していた中型の固体燃料ロケットM-V(ミュー・ファイブ)と、NASDA(宇宙開発事業団)から引き継いだ大型の液体燃料ロケットH-IIAの2系列のロケットを運用していた。
しかし、M-Vロケットは衛星打ち上げのための実用機ではなく、ロケットの実験・研究を主目的として開発されていたため、仕様が量産には適さず、打ち上げコストが1回75億円にも上るなど、経済性・運用性・即応性に大きな課題を抱えていた。このため、M-VロケットはJAXA移管後、06年の7、8号機打ち上げまでで廃止になった。
H-IIAロケットは、大型であるため低高度ならば10トンの衛星を軌道上に投入できるが、商用化が進み三菱重工業に移管して打ち上げ費用が半減した現在でも1回100億円程度になる。そこで、人工衛星の軌道投入などのミッションに最適化した小型ロケットとしてイプシロンが登場した。イプシロンの打ち上げ能力は最大1.2トン(地球周回低軌道の場合。オプション形態の太陽同期軌道では450キログラム)程度で、中型の衛星まで軌道投入でき、将来的には1回の打ち上げ費用は30億円以下に抑えられる見通しである。また、毎月あるいは毎週というような高頻度で中・小型の人口衛星を軌道投入することができれば、衛星を運用する各種団体のタイムリーな需要に応えることが可能になる。このため、様々な新技術で簡素化が図られた。この結果、1段発射座据え付けからは7日、搭載する衛星への最終アクセスから3時間というように、組み立てや点検などが極めて短期間で可能になる。地上管制は、ロケットの知能化により、ノートパソコン1台(実用上は冗長化で2台)に集約可能になる。
これまで固体燃料ロケットの開発・生産に携わってきた旧ISASやIHIグループなど企業の技術継承が実現されたことや、打ち上げが06年以降久しく途絶え、廃止が取りざたされていた内之浦宇宙空間観測所が射場となることなどから、関係各方面からの熱い期待が寄せられている。

(金谷俊秀  ライター / 2013年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イプシロン」の意味・わかりやすい解説

イプシロン
Epsilon Launch Vehicle

宇宙航空研究開発機構 JAXAが開発した小型衛星打ち上げ用の固体燃料ロケット。地球周回低軌道 LEOに 1.2tの打ち上げ能力をもつ。2006年を最後に廃止されたΜ-Vロケットを土台に,より安価で柔軟に運用できるシステムの構築を目指して開発された。設計面で価格性能比を追求し,1段目に安価な固体燃料ブースタを用いて低コスト化,2,3段目にΜ-Vの固体モータを改良して使用したほか,ロケットに搭載した点検装置による自律点検とパーソナル・コンピュータ数台で行なうモバイル管制により人手の簡略化を実現。組み立てや点検などの運用を効率化し,一段目を発射台に据えてから,わずか 1週間という短期間に打ち上げることを可能にした。2013年9月14日に鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から 1号機が打ち上げられ,基本性能が確認された。

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デジタル大辞泉プラス 「イプシロン」の解説

イプシロン〔自動車〕

イタリアのランチアが1994年から製造、販売している乗用車。3ドアの小型ハッチバック。1994年発表の初代モデルは「Y」と表記し、日本では「イプシロン」と呼ばれた。2002年に2代目モデルが登場し、車名が「Ypsilon」になった。

イプシロン〔筆記具〕

イタリア、アウロラ社の筆記具のブランド。クリップ部分は「Υ」をイメージ。万年筆とボールペンがある。

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