操作システム,OSともいう。コンピューターの資源である処理装置,記憶装置,入出力装置,翻訳プログラムなどを,有効,細密に利用するためのもっとも基本的なシステムプログラム。
1950年代初期のコンピューターでは,数少ないプログラマーが自分でコンピューターを操作したが,コンピューターの効率よい利用が必要になると,専業のオペレーターがコンピューターを操作するようになった。プログラマーは,プログラムとデータをオペレーターに渡すだけでコンピューターには触れない。さらに能率を上げる必要が生じ,50年代後半にはプログラムを連続的に計算機にかけるモニタープログラムmonitor programが開発された。これらが最初の本格的なオペレーティングシステムである。
初期のオペレーティングシステムでは,プログラムの記述言語その他の情報を制御カードから読み取り,必要な翻訳プログラムを準備してはプログラムを翻訳し,さらにデータとあわせてプログラムを実行した。コンピューターの使用時間を計測して計算機の利用料金を算出したり,プログラムが実行中に正常状態から逸脱すると,その状況に関する情報を出力したりもした。このようなオペレーティングシステムを完ぺきに働かせるため,コンピューターのアーキテクチャーにも多くのくふうが加えられた。
初期のオペレーティングシステムではデータの媒体は磁気テープがふつうであった。磁気テープは起動と停止のたびに時間がかかり,テープ上にもデータ間の隙間が必要であったので,データはなるべくまとめて記録しておくのが得策であり,一方,プログラムでは個々のデータの処理として記述するのが実際的であったから,この両方式のバッファーを使っての橋渡しの役もオペレーティングシステムが担当するようになった。これをIOCS(input output control systemの略)という。
カード読取装置やラインプリンターの速度は遅いけれども,計算中にはこれらの入出力装置は必要でない。そこで計算と入出力の間に磁気テープを介入させて全体の処理速度をあげるくふうもオペレーティングシステムの一つの段階であった。この方式をSPOOL(スプール)(simultaneous peripheral operation on lineの略)という。
60年代から,割込み機能のくふうとともに,中央処理装置を複数のプログラムで時分割して全体の効率を高めようという気運になってきた。すなわち,あるプログラムが入出力装置の使用などで処理装置を開放すると,別のプログラムに処理装置を使わせる。処理装置使用中のプログラムより高い優先度のプログラムの入出力が終了すると,処理装置を高優先度のプログラムに割り当てる。一つのプログラムが処理装置を長時間使うと,時計が割込みをかけて中断し,プログラムの優先度を下げる。この方式を使えば,1人のプログラマーが休み休みコンピューターを使っても,システム全体としては資源をむだにすることはなくなる。そこで電話回線の先にたくさんの端末装置をつけて,おおぜいで同時にコンピューターを利用するタイムシェアリングシステムの利用形態が始まった。
タイムシェアリングシステムでは,回線の伝送速度の関係から,プログラムやデータを毎回送るわけにはいかない。したがってプログラムやデータをファイルとして,コンピューターシステムに接続されている大容量の磁気ディスクに記憶させておき,必要に応じて端末からファイルを作成したり修正したり,読み出して計算に使ったりするようになった。このような多数のファイルを管理するプログラムをファイルシステムfile system,ファイルを作成,修正するプログラムをエディターeditorという。
タイムシェアリングシステムでは,多数のプログラムが高速記憶装置と大容量記憶装置の間を出入りし,またそれらのプログラムは独立に動くだけでなく,プログラムどうしで同期をとり,通信しあったりする。さらに,同じファイルを複数のプログラムで読んだり書いたりする。したがってタイムシェアリング用のオペレーティングシステムの開発には,きわめて高度なプログラム技術が必要である。
80年代にはLSIを使ったパーソナルコンピューターが急速に普及し始めた。これらの小型コンピューターでも,機能が向上するに従って,オペレーティングシステムが装備されだし,コンピューターの利用は以前に比べて容易かつ能率的になったが,小型コンピューターの利用者はプログラム言語のほかに,オペレーティングシステム用の指令も覚えなければならなくなった。オペレーティングシステムの指令はプログラム言語のようには統一されていないが,よく使われているシステムは2~3種類である。
執筆者:和田 英一
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コンピュータによる仕事を能率よく連続的に処理し、コンピュータシステムの運用を管理するためにつくられたプログラムの集まり。略してOSともいう。プログラムの実行およびコンピュータシステムのリソース(資源)を管理することによって、システム全体の生産性を高めること、ならびにユーザー(使用者)の使いやすい機能を用意して、ユーザーの生産性もあわせて高めることを目的とする。オペレーティングシステムによって、1台の機械を何人ものユーザーで同時に使うことができる機械に変えたり、ネットワークに接続し分散システムを構成したり、インターネットを活用したりすることができる。MS-DOS(エムエスドス)、Windows(ウィンドウズ)、Mac OS(マックオーエス)、Unix(ユニックス)、Linux(リナックス)、MVS、TRON(トロン)、携帯電話向けのSymbian(シンビアン)などがある。
[土居範久]
『清水謙多郎著『オペレーティングシステム』(1992・岩波書店)』▽『白石洋一著『コンピュータシステム入門――アーキテクチャからオペレーティングシステムまで』(2006・共立出版)』▽『河野健二著『オペレーティングシステムの仕組み』(2007・朝倉書店)』
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…コンピューターのメモリー(主記憶)を,実際に装備されているものより,事実上大きく見せかける,オペレーティングシステム(OS)の機能。 コンピューターに1種類のメモリーしかなく,それに対して一様なアクセスができるとプログラムが書きやすい。…
…このようなコンピューターにおける仮想化では,各利用者がそれぞれ独立の仮想記憶をもち,入出力装置を含めて別の論理構造のコンピューターを見かけ上もつことができるようになっている。この仮想化のための変換機構としては,オペレーティングシステムと称するソフトウェアがその役割を果たすが,一部ハードウェアやファームウェアも関与する。代表例としては,Multics,IBM VM/370オペレーティングシステムなどがある。…
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