オーバーツーリズム(読み)おーばーつーりずむ(その他表記)Overtourism

デジタル大辞泉 「オーバーツーリズム」の意味・読み・例文・類語

オーバーツーリズム(overtourism)

ある地域に観光客集中して過剰に混雑することにより、さまざまな弊害が生じること。観光公害
[補説]具体的な例としては、宿泊施設の不足や景観の損失により観光客の満足度が低下すること、また、ごみの投棄や騒音交通渋滞により地域住民の日常生活に支障が出ることなどがある。

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共同通信ニュース用語解説 「オーバーツーリズム」の解説

オーバーツーリズム

観光地に客が集中し、公共交通の混雑やごみのポイ捨てなど環境や現地の生活に悪影響が出る現象。観光公害とも呼ばれる。世界各地で旅行者が増える背景には、新興国における中間層の台頭や格安航空会社(LCC)の広まりがある。世界遺産のイタリア北部ベネチアでは観光客が押し寄せて生活を脅かしており、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は7月に存続が危ぶまれる「危機遺産」への指定を勧告した。(北京共同)

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知恵蔵 「オーバーツーリズム」の解説

オーバーツーリズム

観光地において、観光客の過度な増加が、地元住民の生活や自然環境に悪影響を及ぼしたり、土地の魅力を低下させたりすることを指す造語。近年、ごみのポイ捨てや自然破壊、文化財の損傷のほか、観光バスによる交通渋滞や混雑、立ち入り禁止区域への侵入・撮影、夜間の騒音などが、世界各地の観光地で問題となっている。日本では「観光公害」とも言われている。
主な事例として、「水の都」として有名で、住民の500倍以上に相当する年間約3000万人の観光客が訪れるイタリアのベネチアでは、長年、観光客の増加による混雑や路上でのごみの散乱などの問題が指摘されてきた。このため、住民らの不満が高まり、ベネチア市は混雑緩和などのため、旅行者から「入場税」を徴収することを打ち出した。オランダアムステルダムでは2017年、酔っぱらって騒ぐ観光客の騒音などが問題となり、複数の乗客がビールを飲みながらペダルをこいで動かす人気の乗り物「ビアバイク」の市内中心部での利用が禁止された。歴史的な建築家、アントニ・ガウディの作品が多く残るスペインバルセロナでは、観光客向けのアパートや民泊が増えたことによって、賃貸住宅が減るなどし、地元住民が暮らし続けることが難しくなっている。
日本でも、訪日ビザの要件緩和などによって訪日外国人が急増し、京都や鎌倉などの観光地で、観光客による混雑やマナー違反への関心が高まっている。例えば、国内外から年間5000万人以上が訪れる京都では、観光客によるバスの混雑やごみのポイ捨て、民泊の増加による騒音などが問題となっている。
こうした事態を受け、観光庁は18年6月、庁内に新たに「持続可能な観光推進本部」を設置。地方自治体へのアンケート調査などを行い、19年6月、国内の観光地における現状や今後の方針などをまとめた報告書「持続可能な観光先進国に向けて」を発表した。しかし、その中では、国連世界観光機関のアンケートなどをもとに、「現時点においては、(日本では)他の主要観光国と比較してもオーバーツーリズムが広く発生するには至っていない」という見方を示している。
専門家らは、オーバーツーリズムへの対策として、主要観光地周辺の名所の認知度を高めたり、早朝や夜間に入場者を受け入れたりして観光客の分散を図ることや、観光地への入場制限・有料化、それぞれの地域性に合った観光客を呼び込むためのマーケティングなどを挙げている。

(南 文枝 ライター/2019年)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オーバーツーリズム」の意味・わかりやすい解説

オーバーツーリズム
おーばーつーりずむ
overtourism

過度な観光客の増加に伴う渋滞や騒音、自然環境への悪影響などの弊害の総称。「over(許容範囲を超えた)」と「tourism(旅行)」を組み合わせた造語で、2016年ごろからアメリカで使われ始めた。日本では観光公害ともよばれる。オーバーツーリズムは大きく分けて、(1)住民の生活環境の悪化、(2)観光資源の劣化、(3)経済的な損失、という三つのマイナス効果を複合的にもたらす。(1)として、渋滞、事故、無断駐車、交通機関の混雑・遅延、ごみ投棄、騒音、トイレの不適切利用、民有地などへの侵入、治安悪化、(2)として自然破壊、景観悪化、落書きなどによる文化財損傷、(3)として観光地の魅力低下、観光客の満足度低下、踏み荒らしによる農作物被害、などの現象が起きている。古くからアンチツーリズム(反観光)やツーリズムフォビア(観光嫌悪)という概念はあったが、21世紀に入り、アジアなど新興国の中間所得層が海外旅行をするようになり、オーバーツーリズムは世界共通の課題となった。イギリスのオックスフォード大学出版局が2018年の「今年の言葉」候補に選び、世界的に広まった。

 スペインのバルセロナでは住民の抗議デモが起き、イタリアのべネチアでは市外転居住民が続出し、クロアチアのドブロブニクでは旧市街地への入域制限、フィリピンのボラカイ島ではクルーズ船乗入れ規制の動きがでている。日本でも京都市、鎌倉市、岐阜県白川村などでオーバーツーリズムが社会問題化した。オーバーツーリズム対策には、観光客の入域制限や事前予約制などの規制、入域の有料化、公共交通機関における地域住民の優先利用、補助による観光関連施設の整備、観光税の導入などによる対策財源の確保、観光場所・季節・時間の分散化などがある。国際機関であるグローバル・サステイナブル・ツーリズム協議会(GSTC:Global Sustainable Tourism Council)は観光振興とオーバーツーリズム対策を両立させた「持続可能な観光」を実現するため、騒音、ごみ、交通の環境負荷などのGSTC基準を設定し、悪影響の最小化を目ざしている。

[矢野 武 2020年1月21日]

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知恵蔵mini 「オーバーツーリズム」の解説

オーバーツーリズム

観光客の過度な集中が地域住民の生活や自然環境に悪影響を及ぼし、観光地の魅力低下にもつながる事態を指す造語。世界各地の観光地で観光客の急増に伴う交通渋滞、混雑、騒音、ゴミの増大、違法民泊などの観光公害が発生し、問題視されている。日本でも京都など一部の観光地で同問題が起こり始めていることから、2018年に観光庁が「持続可能な観光推進本部」を設置し、対策に乗り出している。

(2018-12-25)

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